アメリカの国際協力最前線-InterAction Forum 2018参加レポート

海外トレンド2018.08.31

オープニングセッションでは、イスラム教系の団体Islamic Relief USA、キリスト教系の団体Church、ユダヤ系の団体が同時に登壇し、宗教対立やヘイトスピーチを乗り越えようと訴えた。

2018年6月、アメリカ最大級の国際協力会議「InterAction Forum 2018」に参加してきました。参加から見えてきた、アメリカの国際協力のトレンドと私自身が感じたことをもとに、これからの国際協力を考えてみたいと思います。


“Innovation, Impact and Inquiry”をテーマに開催

「InterAction Forum 2018」は6月12日から14日までの3日間、ワシントンD.C.で開催され、世界各国からNGOの代表者やスタッフ、政府関係者、国際機関関係者、企業関係者など、約700人が参加しました。12日はプレフォーラム、13日、14日が本フォーラムとなっています。

“Innovation, Impact and Inquiry”をテーマに約60のセッションが行われました。セッションの内容は国際協力の現場についてがメインで、資金調達やバックオフィスのオペレーションについてなどはここでは取り扱われていませんでした。米国ではNGOが主催する大規模なフォーラムが複数あり、各フォーラムはコンテンツを絞り差別化を図っており、InterAction Forumは国際協力の現場により力点を置いた会議と言えるでしょう。

#AidToo運動の盛り上がり

今回の会議で議論の的となったのが、本フォーラム初日のオープニングセッションで語られた「#AidToo」の告白です。

会場の照明が暗く落とされ、二人の女性が聴衆に語りかけました。一人は、人道支援の際に性的暴行を受けたことをきっかけに、不正を告発する団体 Report the Abuseを設立した女性、もう一人は、数十年前の性的暴行の経験を長い間公表できなかったが、#MeToo運動の高まりで発信を始めた女性です。会場は静まり返り、二人の女性の勇気ある告白に聞き入りました。

米国から世界に広がったセクハラ・性暴力被害の告発や被害者を支援する#MeToo運動の流れが、国際協力業界にも広がっていることを感じました。

オープニングセッションには600名ほどが集まった。

現場に重きを置いたセッションが豊富

分科会のセッションは「地域の保健センターがより地域に貢献するには?」「ウガンダでのユースの貯蓄グループ活動によるエンパワーメント」や「ザンビアでの看護師のライフスキル研修」など国際協力の現場の事例が多かったです。

また、他セクター連携により実施されている事業発表では、ワシントンD.C.の土地柄か、USAIDとの協働事例が豊富でした。他にも企業や大学などの研究機関との連携事例も見られました。複雑化する社会課題にNGOだけで取り組むことへの限界と、他セクター連携によりお互いの強みを持ち寄ることで、より大きなインパクトを生んでいくことの重要性を感じました。

セッションは講義形式のものだけでなく、ワークショップやディスカッションを織り交ぜて展開されます。私が参加したセッションでは、現地で行われているユース向けのワークショップを参加者が体験するワークショップが実施されました。

セッションの形式は講義やワークショップ、クロストークなどさまざま。

ワークショップでは近くに座った人とグループになり話し合いながらワークを進めた。

現場経験の豊富な参加者が多く、ディスカッションのあるセッションは大いに盛り上がるというのも印象的でした。あるセッションでは、発表者が提示した事業成果のデータをどのように取っているのか、データの取り方が適切であったかといった話題で盛り上がりました。参加者が豊富な現場経験から、データを取る際の注意点やよくあるトラブルなど、多くの知見が共有されました。

逆にテクノロジーなどを活用した新しい取り組みの発表は少なく、比較的昔ながらの開発手法を使った事業内容の発表がメインという印象を持ちました。

NGOが子会社を持ち、現場を運営する

そんな中、注目を浴びていたセッションの一つが、World Bicycle Reliefによる企業とNGOの新しい関係性にスポットを当てた発表です。

World Bicycle Reliefは“自転車の力で人生を変える”というビジョンでアフリカの農村地域で自転車を提供しています。自転車を提供することで、移動がしやすくなり、学校や病院へのアクセスが改善されます。事業で使われる自転車は、このNGOが設立したBuffalo Bicyclesという企業によって製作、販売されており、利益はNGOに還元されます。

NGOが子会社として企業を持つことで、スピード感を持っていた効率化を進めることができる一方、組織文化の違いからコミュニケーションには注意が必要だった、といった経験が、NGO、企業それぞれの立場から語られました。

こうしたNGOと企業が現場で連携していくという事例は、新しい取り組みとして好意的に捉えられ、関心を集めていました。

パネリストはNGOだけではなく、ステークホルダーとなる資金提供者や連携先の企業も一緒に登壇していた。

日本でも、出会い、学び合う場を

このフォーラムがNGOや国際協力に関わる多様なアクターが一同に会し、出会い、知見を共有し合う場として機能していることを感じました。その前提にあるのは、NGOが国際協力を担う重要なアクターとして米国で認識されているということです。SDGsに掲げられる地球規模の社会課題へ取り組むためにはNGOの存在が必要不可欠であるという価値観が共有されており、このフォーラムが多様なアクターを引き付けているように感じました。

日本でもこうしたダイナミックな国際協力NGOのフォーラムが求められているのではないでしょうか。政治経済や技術革新などによる社会の急速な変化の中で“NGO”の役割や意義を再定義することが問われている中、NGOや多様なセクターが“国際協力”というテーマのもとに出会い、学び合い、互いに価値を共有する場が日本にも必要だと感じました。

NGO同士の、そしてNGOと他セクターの議論や学び合いの中で、国際協力へダイナミックに取り組み、一方で“誰一人取り残さない”ために、声なき声にきめ細やかに耳を傾けていく土壌を強化することができるのではないでしょうか。


InterAction Forum 2018
https://www.interaction.org/forum

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