失敗がファンドレイジングを成功に導く-国際会議で学んだ海外と日本のNGOの違い

経営/広報・マーケティング2018.08.07

世界中のファンドレイザーや社会課題に取り組むチェンジメーカーを対象にバンコクで開催されたIFC ASIA 2018。ロンドンに拠点を持つThe Resource Allianceが主催している。

国際協力に限らず、NGOを運営する中でどの団体も頭を悩ませているのが“ファンドレイジング”ではないでしょうか? 広義の意味でファンドレイジングは、助成金の獲得や資金の借り入れなども含みますが、NGOの文脈で考えると、ファンドレイジングから最も連想されることは“寄付の獲得”かと思います。

日本のNGOのファンドレイジングはどのレベルまで到達しており、そしてこれから何が必要なのか? 今回は、今年6月にバンコクで行われた「IFC ASIA 2018」(アジアの国際ファンドレイジング会議)に参加して感じたことをもとに、日本のファンドレイジングの課題を明らかにしていきたいと思います。


日本のファンドレイジングは弱くない

IFC ASIA 2018では、世界32カ国から国際機関やNGOなどに所属するファンドレイザーが約400人集まり、3日間に渡り熱いセッションが繰り広げられました。

オープニングセッションでは、シンガポール出身でWorld Toilet Organization創設者のジャック・シム氏が、世界のトイレ問題をテーマに講演を行った。

3日間で実施されるセッションは80ほど。参加者は、アジアのみならずヨーロッパや中東、南米などからも。スピーカーも世界中から参加し、各国のファンドレジングのトレンドが学べる内容となっている。

よく米国や欧州と比べると、日本のファンドレイジングはまだまだと言われますが、アメリカやイギリス、ドイツ、オランダなどのファンドレイザーの方と話して感じたことは「日本のファンドレイジングは弱くない」ということです。むしろ日本のNGOは、体系立てた戦略をしっかり持っていたり、既存のステークホルダーを大切にする文化も備えていたりと、海外のNGOより優れている部分があると思いました。

では、何が日本のファンドレイジングの課題なのか? 個人的に考えたポイントは3つです。

1. 日本の寄付文化の弱さ

これもよく言われることですが、米国や欧州と比べて寄付マーケットが小さいことは事実です。ただ、この問題については、寄付者側にあるのではなく、支援を呼びかけるNGOなどChampion(という表現を英語では使います)側にあると思っています。

米国や欧州、アジアのNGOでは、いかに新規ドナーを獲得するかという部分に力を入れており、潜在支援者をOne-time donor(実際にお金を出す単発支援者)に引き上げるキャンペーンの企画力に優れています。キャンペーンが多発するということは、そのたびに新しい寄付者が生まれ、その国の寄付マーケットを拡大させているとも言えます。

日本は既存のドナーをどうリテンション(維持)していくかという思考に寄りがちですが、ドナーピラミッドの底の部分を拡張する仕掛けが必要だと感じました。

2. 日本のファンドレイジングは戦略的すぎる

先に述べたように、日本のNGOは、ドナーリテンションや、アップグレード(単発支援者を継続支援者にするなどコミットメント度合いを高めること)について、ドナージャーニーなどを作成して戦略を持っている団体は多いです。

一方で、“ポテンシャルジャーニー”と呼ばれる、関心のない層を潜在層に引き上げ、さらにOne-time donorにアップグレードする部分のジャーニーがなかなか描けていないように思います。そしてポテンシャルジャーニーは、描くこと以上に実際のプラクティスが重要です。ファンドレイジング力は実際のプラクティスの中で磨かれていくものなので、よい戦略だけ持っていても意味がないのです。時には「とりあえず、やってみる」くらいの精神でファンドレイジングをしてみることも大切かもしれません。

IFC ASIA 2018では、コーヒーブレイクやカクテルパーティーのような場面でファンドレイザー同士で話す機会もたくさんあったのですが、ポテンシャルジャーニーが話題になることも多く、日本ではなかなか話題に上らないテーマだったので新鮮に感じました。

コーヒーブレイクの会場では、バンコクならではのタイをはじめとしたアジア各国の料理が楽しめる。

3. ROIの考えが弱い

どのセッションでもよく使われたのは、この“ROI(Return on Investment:投資利益率)”という考えです。つまり、ある寄付キャンペーンにおいて、投資したお金や人的リソースに対し、リターンがどれだけあったかという、とてもビジネス的な視点を海外のNGOや国際機関は持っています。

テレマーケティングやオンライン有料広告など、お金を投資してもROIの高いものには積極的に取り組む、逆にROIの低いものは見限ってやらないと決断するなど、その辺りの潔さが日本は弱く、あれもこれもやらなきゃと手を出して、なかなかROIを数字で追えていないケースが多いと感じました。

これについては、ビジネスセクター出身の人材がNGO業界に増えていくと改善されていくかもしれません。ソーシャルセクターの組織文化のよい部分は残しつつ、ビジネスマインドが取り込まれていくと、ファンドレジイジングはもちろん、強固な組織運営が可能になっていくのではないでしょうか。

ファンドレイジングプランをつくるときの1つのフレームワーク“READY, SET, GO”。

失敗すればするほどファンドレイジング力は強くなる

最後に、これまで挙げたポイントにも共通する海外と日本のファンドレイジングの大きな差は、“失敗を恐れない”ということです。キャンペーンを仕掛ける、ポテンシャルジャーニーを描くなど、海外のNGOが当たり前のようにやっているように見える中にも、話を聞くと何度も何度も失敗を繰り返していることがわかりました。

ただ、重要なのは、常に数字で仮説を立てた上で実践し、ファンドレイジングが失敗した場合にも、もともと立てた仮説と現実の差はなぜ生まれたのか? について、いつも考え抜くということです。その検証の積み重ねが団体のファンドレイジング力の底上げになり、結果としてキャンペーンの成功やドナーのアップグレードにつながっていくのだと思います。失敗の分だけ、成功へのナレッジがたまっていくのです。

ファンドレイジングに悩まれているNGOの皆さん、まずは数字で仮説をつくり、やってみることから始めてみませんか?


IFC ASIA 2018
http://resource-alliance.org/events/ifc/

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