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- 2025年のDAC諸国によるODA動向分析と速報値に対する市民社会共同声明
THINK Lobbyライブラリー, 提言, 研究 2026.04.24

2026年4月9日にOECD(経済開発協力機構)は、OECDの開発援助委員会(Development Assistance Committee: DAC)のメンバーの2025年のODA額の暫定値(速報値)を発表しました(*注1)。
外務省の発表によれば、日本政府のODA実績は、米ドルベースで、167億7,167万ドル(前年比14.4%減。なお、円ベースでは前年比7.8%減の2兆5,399億円)となりました。
以下に、JANIC政策アドバイザーである高柳彰夫(フェリス女学院大学国際交流学部教授)によるODA動向の分析と、JANICも賛同した「DAC市民社会レファレンスグループ」(*注2)が4月14日に発表した市民社会による共同声明を紹介します。
DAC市民社会レファレンスグループによる声明の原文はこちらをご参照ください。
高柳彰夫(JANIC政策アドバイザー)
DACは現在33の加盟国(うちルーマニアは2025年12月に準加盟国として参加)とEUの34メンバーからなる。33か国のODAの総額は1,743億米ドル(約26.1兆円(*注3))で、対前年比23.1%の減額であった。2019年から2023年まで増額が続いたDAC諸国のODAは、2024年に7.1%の減額となった。アメリカの第2期トランプ政権によるUSAID(アメリカ国際開発庁)の解体や、いくつかのヨーロッパ諸国のODA削減により2025年のODAが大きく減ることは予想されていた。2025年6月にOECDは9-17%の減少という予想を発表していた(*注4)が、それを大きく上回り、またDAC史上最も大きな削減となった。最終的な確定値や配分の詳細は、例年12月中旬に発表される。なお、本稿の図表はすべて4月9日のOECDの発表をもとにしたものである。
図表1は各国のODA額をまとめたものである。アメリカの大幅減額(-56.9%)により、ドイツが初めてDAC最大の援助国となった(*注5)。ただし、ドイツも17.4%減少している。ただし、ドイツとアメリカの差はわずかであり、確定値でどうなるのかはわからない。3位イギリス、4位日本、5位フランスと続くが、この3か国のODAも減少した(イギリス:-10.8%、日本:-5.6%、フランス:-10.9%)。イギリスの削減は、ウクライナ危機や第2期トランプ政権をふまえ、国防費の増額のため、ODAに関する目標を従来の対GNI比0.5%から0.3%に下げたことによる。
各国の増減率を図表2にまとめたが、前年に比べて増えたのは8か国(イタリアは0.03%増)にとどまった。最大の減少率となった国はアメリカであった。5大援助国でDAC全体の減少の97%を占め、うち75%はアメリカによるものである。
各国のODAの対GNI比を表したのが図表3である。DAC全体では0.26%であり、2024年の0.34%より大きく下がった。1970年代以来の国際目標である0.7%を超えているのは、ノルウェー、ルクセンブルグ、スウェーデン、デンマークの4か国にすぎない。アメリカのODAの対GNI比はDAC諸国最下位となった。また日本も2024年の0.37%(*注6)から0.35%に下がった。



詳細なデータは12月発表予定の確定値に委ねられているものの、注目すべき点は暫定値と同時に発表されている。
ウクライナに対するDAC諸国からの支援は38.2%の減額となった。しかしながらEUからの支援が65.2%拡大したため、DACメンバーからのODAは18.4%の増額となった。その一方で、サハラ以南のアフリカに対するODAは26.3%減少した。ウクライナは一か国で、サハラ以南のアフリカ全体よりも大きな援助を得たことにもなる。
また所得階層別ではLDCs(後発開発途上国)(*注7)向けのODAは25.8%の減少となった。DACメンバーのODA減少に伴い、サハラ以南のアフリカやLDCsといった社会経済的困難に直面する諸国へのODAが大きな影響を受けた。
多国間ODAでは国連機関に対する支出が27%減少したが、これは特にアメリカの87.2%の支出削減の影響が大きい。一方で世界銀行に対する拠出は6.4%、地域開発銀行に対しては11.6%の増加となった。
人道援助は35.8%削減され、また難民受け入れ費用も22.1%減少した(*注8)。2025年6月のOECDの予想では、セクター別では、保健と政府・市民社会(民主化・ガバナンス・市民社会支援などを含む)が大きく削減されると予想されたが、今回の暫定値発表ではセクター別配分についての数字は含まれず、12月の確定値発表まで待つこととなる。
DAC諸国による贈与は29.1%の減少となり、借款の減少は10.3%であった。ODAに占める借款が占める割合は9.1%であり(贈与相当額にもとづく)、そのうち57.7%を日本が占め、他に借款が多い国はフランス、ドイツ、韓国である。日本はDAC諸国の中で唯一借款がODA全体の50%以上を占める。
OECDは、現段階での各国への調査や統計からの推計で、2026年にはさらに5.8%のODAの減額を予想する。第2期トランプ政権や、ヨーロッパ諸国における極右政党の台頭と一部の諸国での政権関与、ウクライナ危機などを背景とする国防予算の増額などを背景にしたODAの削減傾向が続くものと見られる。国際協力や多国間主義といった価値が弱まっていることの現れの一つがODAの削減傾向であるともいえる。
日本は5大援助国の中で唯一ODAの削減を発表していない。令和8(2026)年度予算では、ODA予算は若干の増額となっている。こうした立場から世界のODAのあり方について何を発信していくのかは今後問われていくことになるだろう。一方で、2025年実績では、日本も減額であったことが明らかになった。円安(*注9)や、日本の予算年度(4月1日-翌年3月31日)と異なるサイクル(1月1日-12月31日)で算出されるなどの事情があるが、OECDの統計上では日本のODA実績(金額、対GNI比)もここ2年間は減少傾向にある。今年(2026年)に日本はDACのPeer Review(相互レビュー)を受ける。日本のODAの実績や政策が国際的な評価を受けることになる。
*注1:OECD (2026) “A historic decline in foreign aid: Preliminary 2025 ODA data,” 9 April 2026.
*注2:DAC市民社会レファレンスグループ(DAC-CSO Reference Group)は、OECD-DACに対する北と南の市民社会組織(CSO)の関与を促進し、調整する。このグループは、DAC の関与に関連する活動、立場、そして進むべき道を計画し、 調整する役割を果たしている。DAC諸国および非DAC諸国のCSOが参加するオープン・プラットフォームとしてのグループの活動は、合意形成、透明性、説明責任という原則に導かれている。
https://www.dac-csoreferencegroup.com/
*注3:OECD統計における2025年の換算レートは1ドル=149.6651円。
*注4:OECD (2025) “Cuts in official development assistance: OECD projections for 2025 and the near term,” 26 June 2025.
*注5:1991年から2000年の間は、日本はDAC最大の援助国であった。アメリカが最大の援助国でなくなったのは、その時期以来である。
*注6:2025年4月の暫定値発表時は0.39%であったのが確定値では0.37%となった。
*注7:国連開発政策委員会(Committee for Development Policy:CDP)が認定した、一人あたりGNI値などの基準にもとづき、国連経済社会理事会の審議を経て、国連総会の決議により認定された特に経済や社会の指標が低い諸国。3年に一度LDCリストの見直しが行われ、2024年12月時点で44か国が該当する。
*注8:2025年の難民受け入れはDAC諸国のODAの13.2%を占めた。日本は難民受け入れの実績が少ないため、0.2%である。
*注9:2023年は1ドル140.5061円から2024年には151,4397円とOECDの換算レートで円安が進んだが、2025年は149.6651円とわずかに円高になっており、2025年の日本のODA額は円安の影響は受けていないと考えられる。
DAC市民社会レファレンス・グループ声明
4月9日、OECDが発表した開発援助(ODA)の速報値によると、ODAは過去最大の23.1%減となる1,743億米ドルに落ち込み、数十年にわたる援助の公約を覆し、世界中の何百万人もの人々を危機にさらしている。
先進国は2024年に今世紀最大のODA削減を実施していたが、2025年にはODA史上最大の削減という劇的な変化がもたらされ、OECDは2026年にはさらに5.8%の削減が見込まれている。
ODAは優先順位を下げられただけでなく、その用途も変更された。援助国は国際開発協力に背を向け、その資源を他の地政学的・商業的考慮のために使い、世界の援助体制そのものに疑問を投げかけている。これらの破滅的な措置による余波は現れ始めており、重要なプログラムの中止によって失われた命に関する現在の推計値でさえ、被った被害の全容をまだ描き切れていない。
DAC加盟国は半世紀以上前に、国民総所得(GNI)の0.7%を援助に充てることを約束したものの、依然としてこの目標を達成できていない。DAC加盟国の実際の支出はGNIの0.26%にとどまり、これは過去20年間で最低の水準であり、2024年の0.34%からさらに低下している。目標を達成したのは、デンマーク(0.72%)、ルクセンブルク(0.99%)、ノルウェー(1.03%)、スウェーデン(0.85%)の4カ国のみであった。
先進国は、ODAの削減や質の低い援助の提供が、決して予算削減策にはならないことを理解する必要がある。また、それはすでに制約の多い援助システムの効率化にも寄与しない。むしろ、それは世界的な備え、人間の安全保障、そして国際舞台におけるパートナーとしての先進国の信頼性を危険にさらすことになる。開発協力は、開発効果の原則に沿ったものでなければならない。特に、それは包括的かつ現地主導であり、現地の開発優先事項に貢献するものでなければならない。
ODAは数十年にわたり人間開発の進展をもたらし、ドナーが負うグローバルな責任の尺度となってきた。しかし残念ながら、現在、ODA支出に関する最新の決定は、条件付きかつ予測不可能なものであることが明らかになっている。先進国は、貧困と不平等を削減するという本来の目的に沿ってODAを再調整しなければならない。
既存の公約を履行するということは、2025年には後発開発途上国(LDCs)に向けて235億米ドル(GNIの約0.035%)しか拠出していないのに対して、GNIの0.2%をLDCに充てることを意味する。サハラ以南アフリカへの援助額は245億米ドルへと減少し続け、前年比26.3%の減少となった。
最貧国、脆弱な国、紛争の影響を受けた国々において、最も取り残された人々に支援を届けるためには、譲許的融資や無償資金が不可欠である。ODAの「インフレ」に対処する上で、援助の質は依然として重要な要素である。長年にわたり、ドナー国は、自国内での難民受け入れなど、国内目的のための資金をODAとして計上してきた。2025年のドナー国内における難民関連費用は230億米ドルとなり、前年より減少した。
ウクライナ戦争に直面し、ドナーは復興支援と人道支援を継続しており、2025年のODA総額の26%近く、すなわち449億米ドルを占めた。そのうち346億米ドルはEU機関によって提供された。世界各地で激しい紛争が激化する中、世界中で最も危機に瀕している紛争地域を支援するためには、富裕国の関心と献身的な取り組みが求められている。
DAC加盟国は、援助を「善意の表れ」として提供するとの考え方を堅持し、ODAのガバナンスに関するあらゆる政治的意思決定を支配し続けてきた。昨年セビリアで開催された4回開発資金国際会議の成果により、初めてドナー側の場でこの議論が提起された。OECD DAC市民社会参照グループは、これを受けて開始されたOECD DACの見直しプロセスに関与しており、今後も関与を継続する。世界の援助体制にとって極めて重要なこの局面において、ドナー諸国には新たなアプローチを形作るまたとない機会が訪れている。しかし、そのためには、援助削減を早急に撤回しなければならない。援助を放棄したり、優先順位を下げたりすることは、選択肢にはなり得ない。
賛同団体一覧:
Reality of Aid Asia Pacific / The Philippines
AG Globale Verantwortung / Austria
Portuguese Platform of Development NGOs / Portugal
Finnish Development NGOs Fingo / Finland
Oxfam / Global
Plateforme des Droits Humains / France
IBON International / Global
La Coordinadora de Organizaciones para el Desarrollo / Spain
Cordaid / The Netherlands
Civil Society Platform for Peacebuilding and Statebuilding (CSPPS) / The Netherlands
AIDL International Foundation / Belgium
Alliance Internationale (AIDL) / France
Africa Development Interchange Network (ADIN) / Cameroon
European Network on Debt and Development (Eurodad) / Belgium
Global Policy Forum Europe / Germany
ActionAid Italy / Italy
Council for People’s Development and Governancen (CPDG) / The Philippines
Alliance Sud / Switzerland
Dochas / Ireland
AidWatch Canada / Canada
Japan NGO Center for International Cooperation (JANIC) / Japan
TZUK KIM-POP / Guatemala
BOND / United Kingdom
Vikas Adhyayan Kendra / India
Réseau des organisations de Jeunes en Action pour la paix, la réconciliation et le développement (REJA) / Burundi
«EDNANNIA» (JOINING FORCES) – INITIATIVE CENTRE TO SUPPORT SOCIAL ACTION, (ISAR Ednannia) / Ukraine
National Association of Youth Organizations (NAYO) / Zimbabwe
Centro de Estudios e Investigación sobre Mujeres (CEIM) / Spain
Association for Women’s Rights in Development (AWID) / Global
Global Focus / Denmark
Cooperation Canada / Canada
Institut des relations internationales du Cameroun / Cameroon
ActionAid International / Global
ACT Alliance EU / Belgium
Act Church of Sweden / Sweden
Institute for National and Democracy Studies (INDIES) / Indonesia
Associação para a Cooperação Entre os Povos (ACEP) / Portugal
Peace Direct / United Kingdom
Felm / Finland
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