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THINK Lobby設立記念イベントレポート「社会変革は『わたし』の手から 市民社会シンクタンクの挑戦」

SEP.05.2022

THINK Lobby設立記念イベントレポート「社会変革は『わたし』の手から 市民社会シンクタンクの挑戦」

JANICは、政策提言をさらに強化するため、今年4月より政策提言・啓発部門を「THINK Lobby」(シンクロビー)に改め、政府任せではない、市民がつくりたい社会を実現することを目指し、活動しています。

7月21日にTHINK Lobbyの設立を記念して、台湾デジタル担当政務委員(閣僚)のオードリー・タンさんをメインスピーカーとしたウェビナーを行いました。THINK Lobbyの活動テーマでもある「社会変革と市民」について、台湾での具体的な体験をもとにお話を伺い、コメンテーターとしてお招きした阿古智子さん(東京大学大学院総合文化研究科教授)との対話では、暴力や戦争などわたしたちが現在直面する課題をめぐり、市民が協働することの意義を深く掘り下げました。

オードリー・タン氏の基調講演(日本語字幕付き)
 


 
このウェビナーは「社会変革は『わたし』の手から~市民社会シンクタンクの挑戦」と題して開かれました。オードリーさんのお話に先立ち、THINK Lobby所長の若林秀樹が、設立の経緯や考え方を説明しました。若林は「自分が行動しても変わらないというあきらめのような意識が極まれば、人間社会のルールを無視した暴力が生み出される隙ができてしまう。THINK Lobbyは、一人ひとりが社会を変え得る当事者であるという意識を取り戻すことが大切だと考え、社会変革に関わろうとする市民の活動を後押しすることを目的としている」と、述べました。さらに副所長の堀内葵から、具体的な活動内容やその参加方法が紹介されました。
 

THINK Lobbyの活動内容を説明する堀内葵副所長(下)

オードリーさんの講演は、「デジタルデモクラシー」の精神を台湾のタピオカミルクティにたとえるユニークな語りで始まりました。タピオカやミルク、お茶の組み合わせで幾通りもの作り方があり、だれもが自由に自分なりの改作をしてレシピを分かち合うことと、「開放的な革新」やデジタルデモクラシーのあり方は似ている、と指摘しました。

台湾では、1996年の総統の直接選挙と同時期にインターネットの普及が始まり、デジタルとデモクラシーの2つの概念は互いに不可分なものとして進化しました。オードリーさんは、「デジタル技術が空間と時間の制限を突破し、公共のスペースに市民がいつでも自由に参加できるスペースを作ることができた」と、語ります。具体的な例として、国税の電子申告システム改善や、新型コロナ対策のマスク販売情報などを挙げました。

デジタルとデモクラシーについて話すオードリー・タン台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

オードリーさんがデジタルデモクラシーで重要だと強調したのは、オープンな公共スペースで官民が協働することです。「飴が欲しいと騒ぐのではなく、一緒に台所に入って作る。人々のために、ではなく、人々と共に、という発想」が必要であり、そのためには「立場が違っても同じ価値観を持ち、問題の解決策を共に考えるという協働が不可欠だ」と、述べました。「政府が市民を信頼することで市民が政策決定に参加しようと思う。そして共通の目標を持ち、解決策が提案され、直ちに変化が現れる。選挙を待つまでもなく、市民がどこでもいつでも自分の意見を述べ、生活により良い影響を与えることができる」と、語りました。

講演後、阿古智子さんは、コメントで安倍元首相の殺害事件に触れ、暴力により変化をもたらそうとした悲劇であり、声を出したくても出せない閉塞感がそこにあると指摘しました。そのうえで、市民が発信力を持つことが難しい社会構造をどのように変えることができるか、と質問しました。

これに対しオードリーさんは、台湾においても2014年の「ひまわり学生運動」以前では、「政府への信頼度は非常に低かった。特に若者たちの間には、政府に言っても仕方がないという無力感が漂っていた」と、述べました。しかし、ひまわり学生運動を経て、「人々は市民と政府が協力して変化を起こせることを体感し、公的な要素を大事にするという気持ちが生まれた。大切なことは官民の信頼関係。政府も市民の能力を活用して協働していくこと」と、答えました。

さらに阿古さんは、ロシアによるウクライナ侵攻や台湾有事の懸念に触れ、「戦争の時代に何ができるのか」を聞きました。「ひまわり学生運動」においてオードリーさんが、シビックハッカーグループの友人らが占拠していた立法院の会場にケーブルを持ち込んで、建物内のインターネットの帯域幅を広げる手伝いをしており、そのことは、「対立する双方に技術提供をすることで情報をオープンにし、双方の判断ミスを避け、対話を広げることに貢献するものだった。本当にこれは素晴らしい。対立を避けるためにこの時代にわたしたちは何ができるのか」と、尋ねました。

オードリーさんはこれについて「対話の重要性」を強調しました。カナダのシンガーソングライターであるレナード・コーエンのAnthemを引用し、「『まだ鳴る鐘を鳴らす』ことが重要。完璧さを求めない。どんな状況下においても自分のミュートを解いて、情報を共有し、ファクトチェックし、官民が信頼し、対話し、協業を重ねて市民社会を築いていくのだ」と、答えました。
 

若林秀樹所長(下)のモデレートのもと、「対話の重要性」を語るオードリー・タン氏(上)と阿古智子東京大学大学院総合文化研究科教授(中)

オードリーさんは、オープンスペースでの議論に慣れていない日本人へのアドバイスを求められた時にも、「あらゆるものにヒビがある。そこから光は差し込む」というコーエンの歌詞を引用し、わずかでも可能性を見つけて行動すれば解決策が打ち出せる、と指摘しました。

1時間半の短い時間ではありましたが、オードリーさんと阿古さんにはライブでご出演をいただき、200名超のご参加のみなさんと共に、市民社会スペースを考える貴重な時間を過ごすことができました。開催後のアンケートでも、多くの方が内容に満足をし、今後の生活や行動に役立つ部分があった、とされています。「みんなでつくる市民社会シンクタンク」を掲げるTHINK Lobbyのミッションが、より明確になった第一歩であったと思います。ありがとうございました。

THINK Lobbyのウェブサイトでは、市民一人ひとりが共に学び、考え、行動し、つくりたい社会を実現するための情報を発信しています。ぜひご覧ください。
https://thinklobby.org/

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