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[ NGOは今 vol.2 ]ソーシャル・アントレプレナーとしてスタートし、イシューを追いかけた15年―子どもが売られない世界はつくることができる

連載2017.12.18

かものはしプロジェクト創設者の、本木恵介さん(左)、村田早耶香さん(中央)、青木健太さん(右)。 Photo by Natsuki Yasuda / studio AFTERMODE

日本でNGOが誕生して約60年。これまでNGOは、社会課題によって人生の選択肢を狭められている人びとと共に、その解決に取り組んできた。今、国際協力を担うアクターは多様化し、社会課題は開発途上国に留まらない。NGOに求められていることは何なのか?
「子どもが売られない世界をつくりたい」と2002年に大学生3人によって設立された、かものはしプロジェクト。来年3月、16年間続けてきたカンボジア事業から撤退し、2012年から始めたインド事業をさらに加速させていく。これまで彼らはどんなビジョンを描きながら活動を重ね、そして今、何を見ているのか? 共同代表の本木恵介さんに話を聞いた。


ソーシャルビジネスで、子どもが売られない世界をつくる

かものはしプロジェクト(以下、かものはし)は2002年、当時大学生だった村田早耶香さん、本木恵介さん、青木健太さんによって設立された。彼らが15年間貫いてきたのは、“子どもが売られない世界をつくる”こと、そして“そのために必要なことは何か”だ。

農村で活動を開始した2008年。議論に議論を重ね、都市から農村へのシフトを決めた。 Photo by かものはしプロジェクト

ソーシャルビジネスでやろう――事業収益を上げながら課題解決に取り組めば、外部資金に頼らず継続的な支援ができる。孤児院に保護されたストリートチルドレンや貧困家庭の子どもたちをシステムエンジニアやプログラマーに育て、日本企業からIT事業を受注する支援モデルを考案した。2004年、プノンペンにPCスクールを開講。のべ200人が参加し、事務職への就職や海外大学進学などの成果を出すも3年間で終了した。児童買春や人身売買の被害者の多くは、貧しい農村出身の子どもたち。問題の根本解決にリーチするため、都市から農村地域の最貧困層への支援にシフトした。

子どもを売らせない、買わせない取り組み

2006年、アンコールワットがある街近郊に、観光客をターゲットにした雑貨の生産・販売を行う職業訓練所兼工房「コミュニティファクトリー」を現地のNGOと共に立ち上げた。2008年には独自運営を開始。2016 年までに、村に住む最貧困家庭出身の10代~20代の女性230人に雇用を提供した。

シェムリアップ市から車で約1時間のクチャ村にあるコミュニティファクトリー。15歳~22歳の女性72名が働く。2年間、教育や技術トレーニングを受けながら商品を生産・販売し、その収益を給料として得る。卒業後のキャリア相談や仕事紹介も受けられる。 Photo by かものはしプロジェクト

2009年からは、子どもの売買を摘発する仕組みを強化するため、カンボジア政府、国連、国際NGOと共に警察の能力向上支援に取り組んだ。
国際社会からのプレッシャーも後押しとなり、2010年、カンボジアで子どもが売られる被害は劇的に減少した。

犯罪を犯した人が捕まるという当たり前のことが、カンボジアでは当たり前ではなかった。

カンボジア事業からの撤退。カンボジア社会のニーズに応えるための決断

2013年、児童買春被害の改善と共に経済発展が進み、カンボジア社会のニーズが変化してきたことを受け、組織の経営資源を投入すべきなのか?という議論が起こった。

発展を続けるカンボジアの首都プノンペン。 Photo by かものはしプロジェクト

2009年からカンボジア事業を担当する共同代表の青木健太さんは、こうした現地の変化に合わせながらコミュニティファクトリーを経営してきた。当初目指していた雇用数の拡大は企業が担うようになり、“女性に仕事をつくる”から“女性の自立を手助けする”へミッションをシフト。2年間で卒業するスタイルに変え、商品も、観光業に頼らない、世界に通用するファッション雑貨ブランド「SUSU(スースー)」を2016年にスタートさせた。

商品はすべて手作業。新しい技術にも前向きに取り組む。 Photo by かものはしプロジェクト

日本の20代~30代の女性をターゲットにした「SUSU」。カンボジアの名産であるい草を使用し、かばんやポーチ、サンダルなどのファッション雑貨を展開している。SUSUはクメール語で「頑張って」。 Photo by かものはしプロジェクト

また、近年力を入れてきたのが、社会が変わっていく中でも、自分の望む生き方ができる力を養う「ライフスキルトレーニング」だ。
卒業後、都会で条件のよい仕事に就けても、家探しや人間関係がうまくいかず、数日で辞めてしまうケースがある。教育の機会がなかった農村の女性たちは、国の発展による変化やチャンスを掴むことが難しい。このギャップを埋めようと、職業倫理や人との関係作り、自己管理、問題解決の力をアクティブ・ラーニング型で学ぶトレーニングを開発。女性たちはこれを毎日学び、生産現場での実践を通し、自信をつけていく。

「楽しく学ぶ」をコンセプトにしたライフスキルトレーニング。カンボジア人の好きなゲーム型のプログラムが60種類ある。すべてかものはしが独自で開発した。

「自信は、人生を前向きに生きるために必要なもの。環境や条件で人は変わることができる。であれば、それを手助けをしたい。NGOの役割は、問題を見つけ、世界に伝え、解決できる仕組みをつくりだすこと。政府や民間ができることをやっても意味がない」。(青木さん)

2018年3月、カンボジア事業は、新法人「SUSU」を立ち上げ、青木さんやコミュニティファクトリー事業のメンバーが引き継いでいく。

この決断を共同代表の本木恵介さんは、こう振り返る。
「3年間で財政的な自立ができなければ事業を終了する、と厳しくマイルストーンを区切った。かものはしはマイナスをゼロにする事業、SUSUはゼロを1にする事業。カンボジアの社会にある新しいニーズに応えていくには、法人を切り分けた方が貢献できる」

2012年からインドで支援開始。カンボジア事業から見えた「セオリー・オブ・チェンジ」とは?

カンボジアでの児童買春問題が改善傾向となった2010年、他国での活動の検討が始まり、2012年からインドで事業を実施している。なぜインドだったのか?

「低年齢の子どもが売られる被害の大きさ、そしてパートナーシップを組むNGOのリーダーとの出会いが決め手。彼らの存在が事業のフィージビリティに大きな影響を与えてくる」(本木さん)

カンボジアでゼロから事業を作った経験から、パートナーシップを組むことで土地への理解やネットワークづくりを短縮でき、問題の原因により早くアプローチできると考えた。現在、インド事業の大きな資金源の一つは海外財団の助成金。金額規模が大きく、獲得には優秀なパートナーNGOの力が不可欠だったという。

インドでパートナー団体やサバイバー(人身売買被害者)グループ、その両親から話を聞く。

インドでの人身売買問題を複雑化している大きな原因は、州をまたいで取り引きされることだ。こうした犯罪に対処するには、各地域の政府機関とNGOの連携が不可欠だが十分に機能していない。かものはしは、加害者が罰せられ、被害者へのサポートが適切に行われるよう、インド国内の政府機関・NGOの連携・協力体制をつくり、人身売買ビジネスの根幹を壊す仕組みづくりを行っている。被害者の心理ケアや人身売買を取り締まる法案策定などのプロジェクトをそれぞれ行うパートナーNGO6団体に資金を分配するファンディングエージェンシーの役割も担う。

現地の素晴らしいパートナー団体と共に、事業を進めている。

実は、コミュニティファクトリーを活かさないのか?という声もあった。
「法制度が機能すれば人身売買ビジネスが壊れ、被害者が減るというセオリー・オブ・チェンジがカンボジアの経験からはっきりとあった」と本木さんは説明する。

活動を支える人びとと共に、2020年までに問題解決の糸口を

現在、かものはしの経営規模は約2億6,000万円。収入は年々増え、月額で会費をおさめるサポーター会員がこれを支えている。設立当初、児童買春という深刻なイシューに寄付が集まるのか?と疑問があったが、共同代表の村田早耶香さんがこの問題を多くの人に伝えたいと始めた講演に工夫を重ね、活動を応援してくれる人びとを集めた。10年間でサポーターは約10倍。2017年5月に5,000人を超えた。

年間100件の講演を行う村田さん。話を聞き「活動に参加したい」「応援したい」とサポーターになる人が多い。 Photo by かものはしプロジェクト

ミッションを重要視するかものはしでは、事業は試行錯誤を繰り返す。時には失敗もするが、それも含め活動を応援してくれるサポーターの存在は大きい。

最後に今後の展望を聞いた。
「2020年までにインドでの問題解決の道筋をつけたい。日本を含め他の国での活動展開もありえる。世界的に見て性的な人身売買に注目が集まっており解決方向にある。ミッション・ビジョンを見直すことも選択肢としてあるだろう」

実は本木さんが自分たちがNGOであると意識をするようになったのは最近だという。
「どうやったらこの問題を解決できるのか?――イシューを追いかけ、ここまできた。活動を始めた時、『解決に何十年もかかるよ』と言われた。問題解決に必要なステークホルダーが適切に機能しそれが循環していく=エコシステムを育てることで問題は解決できると、最初から信念として持っていた。ミッションを大切にしているからこそ、過去の活動も否定できる」。


かものはしプロジェクト
http://www.kamonohashi-project.net/

連載 NGOは今
vol.1 貧困、紛争、災害。世界の社会課題を解決するために-NGOに今、何が求められているのか


服の背景にあるストーリーを伝えるWebマガジン「Fragments」では、SUSUの挑戦ストーリーを紹介しています。
http://www.fragmentsmag.com/2017/12/susu/

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