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G7首脳宣言を受け、市民社会が総括-G7広島サミットは「雨」

MAY.24.2023

G7首脳宣言を受け、市民社会が総括-G7広島サミットは「雨」

世界中の市民社会組織が集まる公式エンゲージメント・グループである「C7(Civil (市民社会)7 /)」は、5月21日にG7 広島サミット首脳宣言の評価を発表する記者会見を開催しました。

G7首脳宣言および関連する声明を含め、G7広島サミットの成果について、6つの分野別課題と全体について、「晴れ」「曇り時々晴れ」「曇り」「雨」「土砂降り」の5段階で評価し、「核廃絶」雨/「気候・環境」曇り/「経済」土砂降り/「国際保健」雨/「人道支援」曇り/「しなやかで開かれた社会」土砂降り/「広島市民社会としての評価」曇り時々晴れ/「全体総括」雨 との評価を発表しました。

分野別課題と全体の評価と説明は以下のとおりです。/評価の5段階:「晴れ」「曇り時々晴れ」「曇り」「雨」「土砂降り」

1.核兵器廃絶 評価:雨(5点中 2点) 

この首脳コミュニケは、核兵器の廃絶を求めるものになっていません。核兵器のない世界を「究極の目標」として、「現実的」「実践的」で「責任ある」アプローチにより「安全保障」を担保しながら進めていくという、いわば核軍縮を進めない言い訳ばかりを記しています。C7は、期限を切った核兵器廃絶交渉を始めよと提言しましたが、G7首脳にはその姿勢が全くみられません。

また、核軍縮に関する声明では、ロシアによる核の威嚇を非難しつつも、自分たちの核兵器については「防衛目的」また「抑止目的」だといって正当化しています。いったいG7首脳らは、原爆資料館を訪問し被爆者と対面して何を感じたというのでしょうか。核兵器を肯定する首脳らによって被爆地は踏み躙られたといわざるを得ません。原爆資料館訪問と被爆者との面会に一定の意義があったため「土砂降り」とはないまでも、全体評価は「雨」。

C7核廃絶ワーキンググループ (ピースボート 川崎 哲)

2.気候と環境正義 評価:曇り(5点中 3点) “COP28に向けて着実な実践を”

1)気候変動の影響を不均衡に受けている脆弱な立場の人々の適応策・損失と損害対策の強化が急務ですが、「気候変動への適応や気候災害リスク軽減・対応・復旧、早期警戒システム強化を通じ、脆弱なグループのレジリエンス強化支援を拡大し続ける」ことや「特に最も脆弱な国々に損失と損害を回避・最小化・対処するための支援を拡大する」こと、これまでの気候資金へのコミットメント(2025年までに2019年比で適応資金供与を倍増、損失と損害に対処する基金等)に言及さました。

2)世界の温室効果ガス排出量の約3分の1は、エネルギー起源CO2以外。よって、エネルギー起源CO2削減と合わせ、他の温室効果ガス削減が急務。温室効果ガス削減目標(国が決定する貢献/NDC)の野心向上や提出に関し、「全ての温室効果ガスを含め」と記述され、グローバル・メタン・プレッジへのコミットメント再確認と努力強化も記述されました。

3)公正な移行や再生可能エネルギー拡大などの記述もありましたが、化石燃料についての記述等、ワーキンググループ・メンバーが求める成果とは遠いものでありました。

C7気候・環境正義ワーキンググループ(特定非営利活動法人 「環境・持続社会」研究センター
遠藤 理紗)

3.公正な経済への移行 評価:土砂降り(5点中 1点)

全体として途上国の直面する課題解決より、G7 の視点で設定された「経済安全保障」が強調され、文面では「協調」が謳われているものの、実際には世界に分断とブロック化をもたらす危険性を孕んでいます。

1)債務:債務再編のための「共通枠組み」や債務データの正確性向上について、「G20への期待」が述べられるのみで、G7 としての具体的コミットはありません。特に「民間債権者を多国間債務再編プロセスに参加させる拘束力ある国内法の施行」「国連での多国間交渉」「債務帳消し」などは検討されていません。

2)経済安全保障:「市場歪曲行為」「悪意ある行為者」など、中国を想定し、「グローバルサウス」を取り込みながら半導体などの戦略物資・鉱物資源のサプライチェーンを中国から切り離すことが目指されています。しかしこうしたデカップリングは、環境・社会的負荷を特に途上国にさらに強いるものとなります。

3)ビジネスと人権:「国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs) 」等の国際基準に言及した取組の姿勢が弱くなり、昨年までの人権デューディリジェンスの義務的措置の必要性についても、言及が無くなっています。

C7公正な経済への移行ワーキンググループ (特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター
内田 聖子)

4.国際保健 評価:雨(5点中 2点)

コロナを超えて新たなパンデミックへの備えを万全に、という触れ込みで、大きな期待とたくさんの人々の努力を背負ってのG7国際保健プロセスでしたが、一つには時間切れ、もう一つは日本という国が抱える限界と制約で、残念ながら期待外れの結果に終わりました。

パンデミックへの備えについては、格差の元凶の一つである知的財産権に手をつけることができず、公正な医薬品アクセスを目指すはずの仕組みが、(企業の)自発性に依存したものにとどまってしまったのが痛手です。「独占から共有、競争から協力へ」の移行が不可欠だったのですが、広島サミットはせっかくの機会を逃してしまいました。

他の課題も、網羅的に触れられているのは良いものの、G7が最も求められている資金・技術の貢献は示されず、他のプラットフォームへの注文付けや前の誓約の焼き直しがほとんどでした。国内事情でなく、「世界を向いたG7」の実現を心より祈念しているところです。

C7国際保健ワーキンググループ(特定非営利活動法人アフリカ日本協議会 稲場 雅紀)

5.人道支援と紛争 評価:曇り (5点中 3点)

食糧危機を含む人道危機に対して210 億ドルの支援表明がなされたことについては、拡大する人道危機へ対応するためには不可欠であり、高く評価されるものです。また、教育機会の重要性、教育を後回しにできない基金や国連機関への支援への言及、さらに、仙台枠組みに沿った防災・減災への取組や、先行的行動の強化が含まれたことも歓迎します。

全体としてワーキンググループが提言してきた課題の多くは、言及はあるものの、210 億円の表明以外には、明確なコミットメントがなく、具体的性に欠けるものが多いと言えます。また、人道支援の実施に不可欠な「現地関係者や現地のリーダーシップ強化」については言及がありません。人道支援と保護へのアクセスをいかに確保していくのか、深刻な人道支援のシステムの課題への対応を前進させるため、具体的な政策に繋がることを強く期待します。

C7人道支援と紛争ワーキンググループ(特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム
柴田 裕子)

6.しなやかで開かれた社会 評価:土砂降り(5点中 1点)

まず、過去2回のG7にわたって発出されてきた開かれた社会や民主主義に関わる声明が出されなかったことは、残念です。今回首脳声明では、C7が求めていた市民が自由に活動できる領域(シビック・スペース)については、一切言及なく、世界的に問題視されている縮小する市民社会スペースに対してG7が何も政治的意思を見せなかったことは遺憾です。また民主主義に関するところでは、民主主義の重要性を指摘するものの、ほとんどが他国との情報戦の話になっており、過去にあった一般的なデジタルスペースの安全性やフェイクニュースへの対応などからは乖離しています。公正な選挙、アカデミアの自由などドイツで扱われたテーマは含まれていません。移民について、半分近くが非正規移民、組織犯罪のこととなり、彼らが現在置かれている過酷な状況について改善努力が一切ないのは、大きな問題です。さらに、表現の自由などについて全く言及されてません。国際メディアセンターにおける市民の参画については改善せず、NGOを外に追いやり、IMCにあるNGOの活動予定掲示板をも撤去する次第でした。首脳声明では、「市民社会団体の声に耳を傾け、これを支援することにコミットする。」とあります。今後の改善に期待します。

C7しなやかで開かれた社会ワーキンググループ(一般社団法人グリーンピース・ジャパン
小池 宏隆)

<全体>
市民社会から見たG7広島サミット 評価:曇り時々晴れ

広島市民として、G7サミットが広島で開催されたことには大きな意義があった。

議長国を務めていただいた岸田総理、核兵器保有国を含む各国の首脳に平和公園を訪問いただいたこと、無事にサミットが開催できるように力を合わせた関係者や広島市民、市民社会の声を政府や世界中に届けてくれたプレスの皆さん、私たちの活動をサポートしていただいた外務省、1年間ずっと共に走ってきたNGOの仲間に感謝する。

私たち市民一人ひとりが、世界が抱える問題や多様性を学んだ機会になった。しかし、首脳宣言は政治のための政治にしかなってなく、私たち市民と政府の間に距離感や意識のギャップがあり、何のためにG7サミットを行なっているのか懸念を感じる。

(特定非営利活動法人 ひろしまNPOセンター 松原 樹裕)

全体総括  評価:雨(次への期待は「せめて曇天に、願わくば晴れに」)

今回のG7首脳宣言に対し、C7の6つのワーキンググループ(WG)の評価はいずれも「辛口」となりました。その具体的な理由はWG毎に異なるものの、総体としては、今回の首脳宣言に十分に市民の視点が反映されているとは言えない、という評価です。全体としての評価は5段階で「2」(雨)と言わざるを得ません。換言すれば、この宣言に基づきG7諸国が出す政策や制度が、真に、市民にとって公正で豊かな社会につながるか、がおぼつかないということでもあります。

C7を始めとするエンゲージメントグループの役割は、「G(政府)」にはない視点を提供し、7か国の政策が、本当にSDGsが目指す「誰ひとり取り残さない社会」の実現につながるのか、を問い続けることにあります。このプロセスをより広げ、深め、続けることによって、今の雨模様が晴れ、せめて曇天になるよう期待します。

(特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン事務局長 木内 真理子)

C7コミュニケ

C7について

G7には、「エンゲージメントグループ」と呼ばれる、政府とは独立したステークホルダーにより形成される各グループが存在し、G7で議論される関心分野について、G7の成果文書に影響を与えるべく政策対話や提言を行います。Civil Society 7(通称C7)はこのエンゲージメントグループのひとつで、市民社会により組織されます。毎年、議長国の市民社会が中心となって、G7国のみならず、G20諸国や開発途上国等の市民社会と協働しながら提言をまとめ、G7に向けて発信します。詳細はホームページ(英語)をご覧ください。

G7市民社会コアリション2023について

G7市民社会コアリション2023は、2023年に日本の広島県で開催されるG7サミット首脳会議および関連閣僚会議に、市民社会の声が反映され、2030アジェンダが掲げる「誰ひとり取り残さない社会」の実現に貢献できるよう、議長国である日本政府を含むG7各国政府に働きかけるためのプラットフォームです。詳細については以下のホームページやSNSをご確認ください。

ホームページ:https://g7-cso-coalition-japan-2023.mystrikingly.com/
Twitter:https://twitter.com/g7cso2023
Instagram:https://www.instagram.com/g7cso2023
Facebook:https://www.facebook.com/g7cso2023

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