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DEC.09.2020
2020年12月9日
特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC)
今春から猛威を奮ってきた新型コロナウイルス感染症に対するワクチンが、開発・治験を終えてまもなく供給される、という報道が増えてきました。日本政府は、ワクチンを製造する複数の会社と交渉し、日本に住む人々にワクチンが行き渡る量を確保しようとしています。私たちはこの取り組みを歓迎します。
しかし、同時に「最貧者が踏みつけられてはならない(Poorest must not be trampled)」といった声も発せられるようになりました。貧しい国のスラムの住民や紛争・災害から避難している人々は、感染症に対して脆弱な環境で生活しています。この人たちへのワクチンがどのように供給されるのかは、明らかではありません。
もっとも懸念すべきは、「ワクチン・ナショナリズム」とも呼ばれる動きです。一部の先進国は、ワクチン開発で成功を収めることで国際社会での影響力を拡大しようとしています。また、ワクチンを自国民のために独占的に確保する動きも広がっています。このような動きが加速すると、資源に乏しい途上国へのワクチンの供給が大幅に遅れる可能性があります。
過去に、エイズ治療薬が普及する過程では、途上国の患者への供給が遅れました。先進国の製薬業者が知的財産権を盾に利益の確保にこだわったため、先進国の患者のみが治療薬にアクセスでき、途上国の患者への供給が滞りました。その結果、治療薬があれば生きられた患者が亡くなるという事態が多く発生しました。今回のワクチンの普及においては、このようなことは避けなければなりません。
本来であれば、WHO(世界保健機関)とGAVI(途上国における子どもの予防接種を推進するアライアンス)が立ち上げた「COVAXファシリティーズ」の仕組みによって、ワクチンは貧富の差に関係なくすべての国に供給されるべきです。しかし、ワクチン製造国であるアメリカとロシアがこの仕組みに参加していないだけでなく、集まった資金も不十分な状況です。途上国政府はワクチンを購入する資金的な支援を先進国や国際機関に求めていますが、現状では、供給できるワクチンの数は大きく制限されることになります。
このままでは、所得の高い人々だけがワクチンを接種できるという不公正な状態が世界中で生まれかねません。国際協力に携わる日本のNGOネットワークであるJANICは、日本政府と国際社会に対して、ワクチンが公正に供給されるために国際協調を強化するよう求めます。
janic-advocacy@janic.org
03-5292-2911
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