2019年6月29日
C20
【市民社会 緊急声明】待ったなし:G20は約束を実行に移すべき
G20は、世界の普通の人々が直面している現実の課題に対応するために行動を起こすべきです。G20がおこなった約束は、具体的でタイムリーで現実的な行動に移されなければなりません。G20は、グローバルな解決策が必要であるグローバルな課題への対応に関し、説明責任を果たさなければなりませんし、解決策を提示しなければなりませんし、毅然として行動しなければなりません。C20の各ワーキンググループは、2019G20大阪サミットの首脳宣言を受け、以下の声明を発表します。
- 反腐敗
私たちは、G20による新しい公益告発者の保護に関するハイレベル原則の採択を歓迎し、G20諸国がすぐにその原則を実施することを求めます。首脳宣言では、反腐敗に対してより焦点を当て、現在のアクション・プランの実施を約束したことは、励みとなる証ですが、G20諸国は、すでに存在する他の60のコミットメントを見過ごしてはなりません。
- 教育
私たちは、G20首脳宣言において、G20各国がすべての人へ包摂的かつ公正な質の高い教育を推進し、質の高い初等・中等教育へのアクセスを含む女の子と女性の教育を支援し続けると表明したこと、また「G20持続可能な開発のための人的資本投資イニシアティブ」が合意されたことを歓迎します。引き続きG20各国が、SDG4の達成に向けて、具体的な議論を継続することを期待します。
- 環境・気候・エネルギー
G20は、気候行動を拡大させることを約束できず、かろうじて既に合意したことを繰り返すだけでした。これは危険な気候変動を回避するには全く不十分です。G20は、気候変動の危険性に向き合い、9月の国連事務総長による気候サミットに向け政治的意思を高めていく必要があります。残された時間はもうありません。
- ジェンダー
「25by25」はディーセントワークを通じて達成される必要があり、G20各国政府は、そのための行動計画を策定・実施するべきです。また、「仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関するILO条約」を批准すべきです。ジェンダー主流化戦略を推進するために、ジェンダーWG設置などのメカニズムを構築すべきです。
- 国際保健
私たちは、首脳宣言のみならずG20大阪サミットプロセス全体を通じて、保健を「開発の前提条件」とし、主要議題として位置づけてきたことを称賛します。私たちは、G20が健康な高齢化、薬剤耐性問題や保健緊急事態の克服、エイズ・結核・マラリアの終息、そして財務省と保健省の協力関係の強化を通じたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けて、責任を持って取り組むと表明したことを歓迎します。しかし、私たちは、保健目標の達成における市民社会やコミュニティの役割の重要性や、保健における衡平の原則が明記されなかったことを極めて残念に思います。また、私たちは G20諸国に対して、医薬品や診断技術の研究開発を具体的に前進させるための適切な薬剤耐性問題への取り組みに、確実な資金拠出を直ちに行うよう求めます。私たちは G20諸国に対して、9月に開催される国連 UHCハイレベル会合に首脳級の参加を確保するよう呼びかけます。
- インフラ
G20首脳によって「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が採択されましたが、気候変動に関するコミットメントは非常に弱く、パリ協定に逆行する石炭発電への支援停止を求めていないことは大変残念です。
- 国際財政制度
G20財務省・中央銀行総裁会議は、グローバルIT巨大企業に対する新しい課税システム作成の計画に合意しました。しかし、いま必要なことは、特定のビジネス・モデルに限らない国際課税システムの抜本的改革であり、移転価格税制から多国籍企業への合算課税への転換です。
- 労働・ビジネスと人権
G20が毎年2025年までに雇用のジェンダーギャップを25%削減させる目標を定期的に報告する決断を歓迎します。労働市場から置き去りにされるリスクのある若者の割合を2025年までに15%削減する目標について同じように報告することを求めます。G20は、過去に約束したビジネスと人権に関する「国別行動計画」を策定すべきです。
- 貿易・投資
G20の主要議題である「保護貿易 vs.自由貿易」は偽りの二項対立であり、真の問題は「新自由主義的な市場原理主義 vs 人々と地球環境のための持続可能性」です。G20サミットは WTO改革と鉄鋼の作業生産問題への具体案を提示できませんでした。全WTO参加国による貿易の公正なルールを求めます。
- デジタル経済
G20は自由なデータ流通のためWTOにおける電子商取引交渉を促進しようとしましたが、参加国内で合意を取ることはできませんでした。またG20による人間中心のAI原則も、抽象論にとどまりました。市民社会が参画する権利・社会・環境・ガバナンスの観点を含むグローバルな議論が喫緊の課題です。
- 地域から世界へ/市民社会スペース
世界中で市民活動スペースが縮小しているにもかかわらず、G20サミットではこの問題が議論されていません。G20諸国においても、少数民族を含む少数派や社会的指導者たちが迫害や強制収容、表現の自由の剥奪に直面しています。私たちはG20諸国に対し、人権を守る取り組みを犯罪化したり、人権擁護者に烙印を押すことを止めさせるために具体的な行動をすることを求めます。私たちは、経済的利益を人権の上に置く傾向に対して、強い懸念を表明します。私たちは、メディアや情報また集会へのアクセスに対する不必要な制限によって、G20のプロセスへの市民社会の関与が妨害されてはならないと強く主張します。G20開催国は、サミットのプロセスに対する市民社会の十全な参加と利害関係者および市民のアクセスを保障しなければなりません。G20各国首脳は、市民の声や地域社会の声を聞いて、その政策決定プロセスを民主主義的で市民参加型のものに変えていかなければなりません。
私たちC20は、G20リーダーが合意に至ったことを称賛しますが、緊急的に必要な具体的行動を求めます。そうすることでG20はこの世界を持続可能で公正・平和な空間に変革することができます。
緊急声明全文(日本語/英語)
・緊急声明 待ったなし:G20は約束を実行に移すべき(749KB)
・Immediate and Emergent Statement: No time to lose: G20 should translate words into actions(692KB)
C20について
C20 は 2013 年より、C20 の公式なエンゲージメント・グループとして認知されており、世界中の市民社会が G20 に対して人々が抱く関心事項を伝えるためのフォーラムを提供しています。C20 は G20 のプロセスに貢献するために政策提言書を作成しています。
本件に関するお問い合わせ先
稲場雅紀(C20 シェルパ)、堀内葵(C20 サブシェルパ) c20@civil-20.org