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原発問題と持続可能な社会に関するJANICの考え方

原発問題と持続可能な社会に関するJANICの考え方

2011年8月4日
(特活)国際協力NGOセンター(JANIC)
理事長 大橋正明


 2011年3月11日に発生した地震とその後に続く津波、福島第一原子力発電所の事故は、日本にとって社会のあり方を見直す分岐点となりました。現代の世界では、自然環境、社会経済などの諸問題は、国境を越えて相互に影響を及ぼします。このような世界では、福島第一原子力発電所のような大規模な事故がもたらす脅威は瞬時にして国境を越えて共有され、また影響を及ぼします。JANICは、国際協力NGOのネットワークとして社会的に最も弱い立場の人たちを支援するために、国境を越える問題に取り組んできました。その経験から、今回の原子力発電所の事故について以下の通り考えています。

グローバルな構造からみる原発の問題
 福島第一原子力発電所の事故は、日本社会が原子力発電の持つリスクを受け止めきれないという事実を明らかにしました。原子力発電による事故は、地球全体に負の影響を与え、取り返しのつかない環境破壊をもたらします。さらに、人的、物質的な被害も他の災害に類を見ないほど深刻です。放射性廃棄物の問題を含め、もはや日本社会において原子力発電を許容する余地は残されていません。

 加えて、今回の事故は、日本社会が構造的に抱えてきた、しかし可視化されてこなかった問題に光をあてました。それらは、情報公開に恣意的な制限をかける行政のシステムの問題であり、また問題の影響を社会の構成員の一部に押し付ける構造です。福島第一原子力発電所の作業員は、過酷な環境での作業による、大量被ばくの危険に直面しています。また周辺に住む人々は、自主的な判断を下すには不十分な情報しか得られない中での生活を余儀なくされています。さらに、不正確な情報を基にした差別や風評被害をしばしば受けています。これはまさに人権の問題であり、生命の危機の問題です。福島の人たちが直面している問題はグローバルな経済・社会構造の中で途上国の社会的弱者が直面する問題と共通しています。

 JANICは、国際協力NGOのネットワークとして長年に渡り貧困、環境、人権、平和など国境を越えた課題に取り組んできました。中でも、国家の開発プロセスと成果はしばしば一過性であり非持続的であること、そしてその結果生ずる負の影響は社会的弱者が最も受けるということを強く認識してきました。今回の事故は、途上国で見られる人権侵害の問題が日本社会にも存在することを顕在化しています。この問題を克服していくためには、政府の意思決定プロセスにおける市民の参加の拡大、被災者の基本的人権の保障とエンパワーメント、及び国のエネルギー政策の抜本的な転換が不可欠です。

日本社会の再構築:情報公開を前提とした社会の形成とエネルギー政策の転換
 今回の東日本大震災においても、日本社会は秩序を不安定化させることなく、むしろ個人や共同体のつながりを基礎とした相互扶助的要素を強めながら社会を維持しています。これまで日本社会においては「市民は政府に多くを依存する」という前提があったため、「市民は自立的な判断と行動をする」という認識は希薄でした。その結果、政府の情報公開は形式的なものに留まっており、今回の原発事故の対応に関する意思決定のプロセスは透明性を欠いています。しかし一方で震災は、市民が必要な情報を取捨選択しつつ、自立的な判断と行動をとりうることも明らかにしました。原発事故を含む政府の情報公開は、今後の政府と市民の関係性の基盤であると考えます。

 同時に、持続可能な社会をつくるために、日本のエネルギー政策を抜本的に改革するべきです。原子力発電のリスクが顕在化した今、よりリスクが小さくまた持続可能性のあるエネルギー供給への転換が求められます。その際に、大規模発電所に依存するのではなく、水力、風力、地熱や太陽光などさまざまな選択肢を複合的に活用し、エネルギーを消費する地域や個人の特殊性を踏まえた形でエネルギー供給を実現する必要があります。さらに、このエネルギー供給のあり方の転換は、大量生産・大量消費型の社会のあり方の見直しと表裏一体です。エネルギーの供給と消費が持続可能性という概念のもとで一体とならない限り、持続可能な社会は非現実的なままとなります。

国際協力を通じた持続可能な社会の形成
 JANICは、これまで「持続可能な社会づくり」「地球環境の保全」「社会的弱者の権利保障」などを柱に国際協力活動を推進してきました。一方で、政府や企業を含む日本の国際協力活動全般においては、これらの視点が必ずしも主流化されていません。今後の日本の国際協力は開発効果を高めるために、これらの視点を主流化する必要があります。

 その際に、日本の国際協力の取り組みに関する適切な情報を途上国の市民が入手できることは大前提となります。特に途上国が今後のエネルギー政策を決定するプロセスにおいて、原子力発電導入の是非は重大な問題です。日本政府及び日本の市民は、今回の事故の教訓をもとに途上国の政府及び市民に積極的な情報提供を行い、途上国市民が原子力発電の危険性を十分に理解し、エネルギー政策に対して主体的な判断を下せるよう支援する必要があります。JANICも福島におけるNGOの支援活動で得た情報や教訓をもとに、国際社会への情報発信を強化していきたいと考えています。

 今後、日本は途上国が持続可能な社会を形成するために最大限の支援を行う必要があります。まずは、原子力発電関連のODAの見直しを行うべきです。また、将来に渡り国策として原発を輸出しないという方針を明確に示すべきです。さらにODA中期目標に示されている通り、再生可能エネルギーの拡大を途上国においてより一層推進していくことが求められます。日本の技術が特に優れている分野において積極的に国際協力を行うことで、日本を含めた地球環境の保全と持続可能な社会の形成に寄与できると考えます。

以上


  「原発問題と持続可能な社会に関するJANICの考え方」PDFファイルにリンク (2011年8月4日)(PDF:11KB)