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DEC.17.2019
2019年11月28日(木)、OECD-DAC開発援助相互レビュー(以下、ピアレビュー)の一環として、DAC審査団と日本の市民社会との意見交換会が実施されました。このプロセスには、日本のNGO9団体20名が参加し、JANICがコーディネートを務めました。
OECD-DAC開発援助相互レビュー(ピアレビュー)とは
DAC(Development Assistance Committee:開発援助委員会)とは、OECD(経済協力開発機構)の下に設置された委員会の一つです。OECDに加盟する30のメンバー(29カ国+EU)で構成され、開発途上国への開発援助を奨励すると共に、援助の量と質を向上させることを目的とする国際機関です。
DACメンバー各国の開発協力の取り組みは、DACの基準遵守と相互学習の機会として定期的にDACメンバー間で審査・レビュー(ピアレビュー)が実施されています。審査を行うのは、DAC加盟国の政府関係者およびDAC事務局で構成された審査団であり、今回の日本政府に対するレビューは、EUとイタリアが担当しました。
ピアレビューの手順は次の通りです。まずDACが定める参照指針の項目に沿ってODA実施状況をまとめたメモランダム(覚書)が、レビュー対象となる政府によって作成されます。その後、審査団による外務省やJICAなどのODA関係部署、民間企業、国会議員、市民社会などへのヒアリング調査が実施され、ODA実施国への訪問調査も行われます(今回はガーナとカンボジアが対象)。最後に、OECD本部のあるフランス・パリにて審査団と外務省による会合が開かれ、審査結果および勧告が発表され、OECDのウェブサイトに審査報告書が掲載されます。なお、最終会合には市民社会の代表も政府代表団の一員として参加し、意見を述べる例があると聞いています。
市民社会としての取り組みと提言内容
DAC審査団との意見交換会を前に、NGOによる勉強会を開催し、日本政府の開発協力の取り組みについて振り返ると共に、NGOからの評価を提言書としてまとめました。勉強会の講師は、JANIC政策アドバイザーの高柳彰夫(フェリス女学院大学国際交流学部教授)が務めました。
NGOによる勉強会では活発な議論が交わされました
今回、日本の市民社会が作成した提言書のポイントは以下の4点です。
①日本政府によるODAに関する最上位文書である「国際協力大綱」において、質の高い成長が目的となっていることの問題点を指摘し、公正な分配や貧困根絶を目的とすべきと提言しています。そ加えて、ODA基本法の制定(立法府によるODAの監視機能の強化)や国際開発庁の設立(外交と援助の切り離し)を明記しました。
②日本のODAは借款(ローン)が多い傾向を指摘し、巨大インフラ整備に注力するのではなく、無償資金協力を増やし、人道支援や社会開発の割合を高くすべきと提言しています。貧困根絶や格差是正に必要な社会インフラ(教育、保健など)や分野横断的課題(ジェンダー、気候変動など)、人道支援が拡充されていない状況や、SDGs実施指針の改定に関する議論にも言及しました。
③特にアジア地域において、ODAの実施にあたって人権侵害や環境問題など様々な課題があることを指摘しました。
④ODAのGNI比率目標の達成、日本政府が進める質の高いインフラとパリ協定との整合性、サプライチェーン上における「ビジネスと人権」の遵守、市民参画の重要性、贈与比率の低下傾向、教育、ジェンダー、緊急人道支援への資金拠出に関する国際約束である「グランド・バーゲン」に対する日本政府の取り組みなどについて、個別の提言書もまとめています。
DAC審査団との意見交換会
事前に提出していた市民社会提言書を元に、DAC審査団から質問があり、それらに回答をしながら、意見交換を行いました。DAC審査団からは、①開発援助を進めるにあたって日本政府の強み ②改善すべき点 ③人道支援に関する日本政府の取り組みの評価について意見を求められました。
市民社会側からは、①開発協力大綱やSDGs実施指針において、強みとして評価できる点はあまりなく、日本政府は質の高い成長を推進しているが、本来は貧困削減が第一目的になるべき、という原則論を述べました。②ODA事業における支援現場での住民からの異議申し立てや、日本政府が石炭火力発電への支援を続けている点で、気候変動に関するパリ協定との整合性がないことや、現在のODAは顔の見える援助にはなっておらず、またNGOはODAの下請けになっている点も指摘し、対応策として、JICA在外事務所や各国大使館に社会開発担当者を置くべき、と提言しました。③日本政府による「グランド・バーゲン」に対するコミット未達成の問題点や、性的搾取への取り組み、緊急時の支援について柔軟性が弱いことを指摘しました。
NGO参加者に質問をするイタリアの政府関係者
今後の課題
DAC審査団との意見交換を通じて、市民社会からの提言をDAC諸国、ひいては日本政府に届けることができました。2020年6月に最終化される審査報告書に、市民社会からの提言が盛り込まれることを期待しています。審査会合では市民社会も参画して議論ができるよう日本政府とOECD-DACに働きかけていきます。
一方で、日本政府のODAを多方面からモニタリングする必要があることも改めて確認できました。例えば、DACが発表しているODA評価の参照基準について、これまでNGO・外務省定期協議会では議題として取り上げられてこなかったことから、NGO間での学びの機会が不足していたことが明らかになりました。今後は、市民社会からの意見がどれだけ日本政府の政策に取り入れられ、実現されていくかを見極めることが重要です。引き続き、政府機関との対話や協議を通じて、開発援助の質の向上に努めていきます。
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