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【プレスリリース】「ODA大綱見直しに関する有識者懇談会」報告書に対するNGO声明

「ODA大綱見直しに関する有識者懇談会」報告書に対するNGO声明

2014/06/30
特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター

 6月26日、「ODA大綱見直しに関する有識者懇談会」(座長:薬師寺泰蔵・慶応義塾大学名誉教授)の報告書が発表されました。

 私たち、日本の国際協力NGOは、今回の報告書が、懇談会の討議を踏まえ、概ね平和主義を堅持する方向で日本の国際協力の指針としてまとめられたことを評価します。また、報告書では、ODAの額に関する国際目標(ODAをGNI比0.7%にする)に比して日本のODA額が低迷していることに警鐘を鳴らしている(4ページ)ほか、NGO・CSOとの連携の戦略的な強化のための外務省・JICA・在外公館の人材育成や組織体制の整備(11ページ)や、社会開発分野での専門性の強化をうたっていること(13ページ)、開発教育の積極的な価値を称揚していること(12ページ)など、新たな視点が付け加えられたことについて、これを歓迎します。

 一方、同報告書には、NGOとして看過できない懸念点があることも事実です。以下、提起します。

1.援助は誰のため?
 ODAの直接的な目的は、あくまで援助対象国の「自立的発展の実現」(報告書7ページ)と貧困の解消であり、日本への外交的・経済的効果は、その副次的な結果として中長期的に還元されるべきものです。しかし、報告書では、「途上国の経済発展と日本自身の力強い成長を同時に実現する」(同7ページ)として、日本の知見・経験の活用という名目のもとに、日本企業の途上国進出による日本自身の経済成長に高い優先順位を与えています。
 報告書では、「国益と国際益は不可分」(同6ページ)としていますが、上記の文脈に照らせば、これは容易に「国益=国際益である以上、国益を追求すれば足りる」という論理に転化しかねません。
 大綱においては、ODAの第一義的な目的があくまで途上国の開発支援にあることを銘記すべきです。

2.援助は何のため?
 現在、2016年以降の世界の開発目標(ポスト2015)の在り方が国連で討議されていますが、そこでは、「貧困の解消」と「持続可能な世界への移行」が二大テーマとなっています。貧困をなくし、公正な富の配分によって格差を縮小し、豊かな地球を次世代につないでいく持続可能な開発の実現が、援助の主目的として語られています。ところが、報告書では、「包摂的」「持続可能」「強靭性」といった枕詞をならべつつも、「成長」主導の貧困削減という図式が前面に出てきています。実際、報告書においてこれを論じた部分(7ページ)のタイトルは「質の高い成長とそれを通じた貧困撲滅」となっており、「成長」に軸足が置かれています。
 世界の様々な例を見ても、経済成長だけで貧困をなくした事例はありません。経済成長は貧困をなくすための必要条件ではあっても、十分条件ではありません。包摂的で格差が少なく、持続可能で強靱な社会を実現するためには、成長自体を包摂的・持続可能で強靱なものにすると同時に、富の公正な再分配と、人々が尊厳を持って生きていくために必要な社会サービスを供給する強い公共セクターが必要です。ODAはそのために不可欠なツールであり、この側面をODAの主目的とすることを新しい大綱においても明記することが必要です。

3.「ODA大綱」から「開発協力大綱」への名称変更の問題点
 報告書では、名称を「ODA大綱」から「開発協力大綱」に変更することを提唱し、その理由として、途上国に流入する民間資金がODAの約2.5倍になり、民間資金が開発に貢献することが内外で期待されていることを挙げています。しかし、大綱が目的とする格差の是正と公平な社会の実現という観点からは、開発資金としての民間資金の適性を検証する必要があります。
 児童労働、公害、土地収奪など企業の開発途上国市場への進出に伴って起こり得る問題をどう防ぎ、人権を守りながら開発や貧困解消を進める原則や規範を民間資金にもどう適用すべきか、もっと議論が必要です。経済成長だけではかえって格差が拡大し、その結果として社会不安が起き、民間資金も引揚げざるをえない状況に追い込まれる危険性もあります。
 市場としての将来性が低いとみなされがちな最貧国には、民間資金があまり行かないという現実もあります。また、途上国への民間資金の流入は景気に左右されるところが多く、投機的な民間投資がかえって人々の生活を脅かしたり、民間資金の急速な引き上げがその国の開発努力を大きく損なったりしたケースも見られます。「開発協力大綱」に名称変更するのは、もっと議論を深めてからでも遅くはないのではないでしょうか。

4.ODAと軍事の間のグレーゾーン拡大への懸念
 報告書では、懇談会の討議を踏まえ、ODAの「軍事的用途や国際紛争の助長への使用を回避する」(6ページ)ことを明記しました。私たちはこれを評価します。一方、報告書の同じ段落には、非軍事目的の支援であれば軍の関与を「一律に」排除すべきではない、との記述があります。「集団的自衛権」が政治の焦点に上っていることも相まって、私たちはこの記述により、ODAへの軍隊の関与について、「グレーゾーン」が歯止めなく拡大するのではないかとの懸念を感じずにはいられません。
 私たちNGOは、紛争地での人道援助に関わる中で、軍による人道支援や災害救援が、特定の国や勢力と結びついたり、軍事的介入と一体化する実態を見てきました。これにより、地域の人々との信頼関係が崩壊するなどして、NGOの人道支援活動の円滑な遂行に大きな支障をきたした事例も数多く存在します。
 一方、東アジア及び東南アジアでは、領土問題などを巡って緊張関係が高まり、軍関係とODAのグレーゾーン(例えば特定の外交的・政治的な対立に関わる巡視船の提供や、軍人の開発関連訓練支援)が拡大される可能性があります。
 新ODA大綱においても、現ODA大綱で運用されてきた、他国の軍に対する支援と武器の供与はしないという、非軍事の原則を堅持するべきです。

5.「持続可能性」をめぐる基本的認識の相違
 報告書では、「持続可能性」(サステイナビリティ)が、包摂性、強靭性と並んで重要なキーワードとされています。しかし、報告書における「持続可能性」のコンセプトは、市民社会のものとは基本的に異なっています。
 市民社会は、持続可能性について、「自然資源を利用した人間活動が、将来にわたって持続できるかどうか」(いわゆる世代間の平等)と「すべての人々の基本的ニーズに応じ、地域・経済格差を解消できるか」(世代内の平等)という概念として理解しています。また、これが「ポスト2015」などにおける国際社会での一般的な理解です。しかし、報告書では、「持続可能性」は、経済成長をいかに持続的にするか、という視点にとどまっています。
 また報告書には、基本的人権を「社会生活や投資環境整備などの持続的な成長の土台」とする本末転倒が見受けられます(8ページ)。初等教育の普及、子どもたちや妊産婦のいのちと健康を守ること、ジェンダー平等の実現など、ミレニアム開発目標(MDGs)に掲げられ、2015年以降の開発目標でも重視されると思われる基本的人権の保障は、それ自体が開発の目的であり、成長のための手段ではありません。
 ポスト2015を展望し、豊かな地球を次世代につないでいける、より公平で公正な地球社会への移行という観点から「持続可能性」を再定義し、それに資するODAの在り方を展望することが必要です。

まとめ
  ODAの第一義的な目的は、貧困をなくし、格差を縮小することで、より公正で公平な地球社会の実現に資することです。私たちは、今後作成される大綱の政府案に対して、国民の代表である国会議員をはじめ、広く市民がしっかりと議論し、国際益を非軍事的な手段によって追求するODA大綱を生み出すことを強く求めます。そうすることによってこそ、国際社会での日本の地位・発言力の向上も実現できると信じています。

プレスリリース全文
「ODA大綱見直しに関する有識者懇談会」報告書に対するNGO声明(PDF:256KB)

【本件に関する問い合わせ先】
特定非営利活動法人 国際協力 NGO センター 調査提言グループ(担当:堀内、山口)
TEL:03-5292-2911 / FAX:03-5292-2912 / E-MAIL:advocacy@janic.org