[ NGOは今 vol.4 ]ハイブリッドなネットワークNGOに

連載2018.03.30

CSO(市民社会組織)の開発効果について議論するグローバルネットワークCSO Partnership for Development Effectiveness (CPDE)。2014年、アジア地域のネットワークNGOが東京に集まり、国際会議が開催された。
Photo by JANIC

国際協力を担うアクターの多様化と社会課題のボーダレス化が進む今、NGOに何が求められているかを考える連載。第4回は、ネットワークNGOを取り上げる。NGO間の連携促進のために1980年代後半に相次いで設立されたネットワークNGOが今、経営難に陥っている。その背景と突破口を考える。


“同業者・総意型”の日本のネットワークNGO

1980年代後半のNGOの隆盛に伴い、各地でネットワークNGOが設立された。主なものでも、札幌、新潟、埼玉、東京、横浜、名古屋、関西、神戸、広島、四国、福岡、沖縄と、全国に存在している。その中で、スタッフを雇用するまでの組織になったネットワークNGOは、東京のJANIC、名古屋NGOセンター、関西NGO協議会である。それ以外にも非常勤のスタッフを雇っているネットワークNGOがあるものの、外務省のNGO環境整備支援事業のひとつである「NGO相談員」の資金に依存している状態で、経営的な自立はかなり難しい。

多様なネットワーク組織を大まかに分類するなら、①目的達成・解散型 ②同業者・総意型 ③リーダー・牽引型 ④行政サービス・調整型 の4つになると思う。もちろん、それぞれが交じり合い、きれいに分けられない実態はある。
私は、日本のネットワークNGOの多くは②同業者・総意型に当たると思う。会員=同業者(NGO)の総意を大事にし、同業者(NGO)が一団体では実現できない、政府との交渉、NGOの環境整備などを実現しようとする。同業者(NGO)自身が弱くなったら、一緒に弱体化する映し鏡のような面がある。また、NGO自身の財政基盤が強くないため、会費などの自己財源の割合は低く、ODAや大きなドナーの影響を受けやすい環境がある。

もともとあったネットワークNGOの経営難

人を雇用する3つのネットワークNGOが慢性的な経営難にぶつかっていると、様々な情報源から聞いた。特に2017年は、財政難によりJANICや名古屋NGOセンターで離職者が出た。それぞれの事務所に聞いてみると、もともと綱渡り的な経営状態のところに、いくつかの委託事業が受託できず経営上の困難が顕在化したようだ。

会費収入はどちらも全体の1~2割程度で伸び悩んでいる。どうしても収入を行政や民間の委託事業、助成金に依存しなければならず、そこにアップダウンの波が生まれると、経営上のリスクが発生しやすい。内部留保が多少でもあり、それで衝撃を吸収できればいいのだが、そこまでの余裕がない。ネットワークNGOが、NGO社会の写し鏡とするなら、これはNGO全体の兆候かもしれないと危機感を感じている。

 2010年に開催されたネットワークNGO・NPOの自立的な経営を考えるシンポジウム。 Photo by JANIC

ゆっくり地盤沈下する「昔ながらの国際協力」?

まず、ネットワークNGOの構成員であるNGO自身が減速していないのだろうか?
寄付回収能力の高い上位グループ見ると、トップから5位あたりまでのグループはゆっくりだが寄付額が上がっており、地盤沈下は一見ないように見える。しかし、順位が下がってくるとそれが現状維持、横ばい状態の様子が見て取れる。さらに中規模なNGOのいくつかをピックアップしてみると微減傾向のものがいくつか見つかる。

いくつかの団体に電話で確認させてもらった。「今のレベルを維持するのだけでも大変」「支援者の高齢化が進んでおり、退会者が増えてきている」といった返答だった。中小のNGOの多くは寄付者の新規開拓が進まず、支援者の固定化と高齢化が進んでいるようだ。以前から言われてきたことだが、寄付額を増加させ続けている数団体と、下降しつつある中小のNGOの二極分解がさらに進んでいるように見える。

成長が見られる上位団体の広報戦略を見ると、圧倒的にその量が多いこととブランド化のうまさは当然だが、現場の特定の素材とストーリーを、緊急感と危機感で“尖らせる”ことでその強さを生み出しているように見える。逆に、「共に生きる」「笑顔」「みんなで頑張る」といった共生的な“丸い”メッセージのところほど、寄付回収の力を失っていないかと危惧する。

人材も集まらなくなっていると聞く。JANICが1987年に設立された頃、NGOの求人情報は、JANICの会報が唯一の情報源だったことがある。その情報が欲しくてJANICに入会する会員も多かった。しかし、最近、NGOの求人になかなか人が集まらないと聞くことが多くなった。ゆっくりとだが、NGOの一部が地盤沈下を起こし、次のステージにとって変わられる時期に来ているのかもしれない。ネットワークNGOの疲弊も、そこに根ざすものがあるのかもしれない。

 NGOの求人情報が掲載されていた、1991年発行のJANIC会報誌。 Photo by JANIC

何が重要なのだろうか? 点から面へ、持続的な効果へ

グローバル社会の目まぐるしい変化と影響下に私たちはさらされている。むしろグローバル課題に対して解決を提示してくれるNGOの存在は未来も必須である。では、NGOにどんな変化が重要なのだろう。

最初に考えたいのは、対処療法的な手法からより持続的な解決手法への転換である。人を助ける“点”の手法から、社会システムそのものの変化を生み出す、影響力のある“面”の手法への転換である。そうなると現地政府の政策への積極的な関与、村に留まらず、県・州・国への広い活動へのアプローチが重要になってくる。こうした提案力と行動力がNGOにも求められてくるのではないだろうか?

次に考えられるのは、問題解決のためのビジネス要素の強化である。寄付の力だけで社会変化を長く持続させることは難しい。そのために商品開発、金融サービス、経営アドバイス、モデルビジネスづくりなどが重要である。ソーシャルビジネス、企業との連携も非常に重要になるだろう。

グローバル課題に、規模でも、持続性においても先駆的な提案できるNGOの存在が求められている。そのためには、現地のローカルNGOとの連携も必須である。

 Photo by ジュマ・ネット

ハイブリッドなネットワークNGOに

上記のような新しいNGO像を前提に考えてみると、ネットワークNGOの新しい変化はどうあるべきなのだろう。

ソーシャルビジネス系の団体や、途上国の労働力や市場にも関心がある企業が対等に関われる会員制度をつくり、彼らと一緒にNGOが活躍できる場をつくる必要がないだろうか。利益優先でなく、持続的な雇用や社会的な価値を生み出せるビジネスセクターとの協働は必須だ。フェアトレードなどは、優先的なセクターだろう。また、国内の難民や移民を対象に活動をする団体、開発教育、グローバル教育団体とも同等な協働が必要だろう。

もうひとつは、②同業者・総意型という民主的で合意形成のネットワーク運営から③リーダー・牽引型へゆっくり移行していく必要があると思う。発想や行動力のあるリーダーがもっと活躍できる空間があってこそ、異業種・異セクターとの積極的な交流と協働を生み出すスピードが生まれ、行政・民間の委託授業や助成金獲得の可能性がより開けるのではないだろうか。

連載 NGOは今
vol.1 貧困、紛争、災害。世界の社会課題を解決するために-NGOに今、何が求められているのか

vol.2 ソーシャル・アントレプレナーとしてスタートし、イシューを追いかけた15年―子どもが売られない世界はつくることができる

vol.3 NGOの価値の再定義-ネクスト若手NGOはどう生まれるか?

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