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[市民社会スペース vol.2]欧州の動向から考える-SDGsは市民社会スペース問題解決の鍵となるか?

連載2017.11.08

今、社会課題の解決に取り組むNGO・NPOや活動家の活動を制限する“市民社会スペースの狭まり”が、世界的に発生している。誹謗中傷や脅迫、逮捕、銀行口座の凍結、ウェブサイト・事務所の閉鎖、活動許可の取り消しなど、弾圧の傾向は強まるばかりだ。なぜなのか。市民社会スペースが担う役割やこの問題にNGOがどう立ち向かうべきかを、国内外の動きを見ながら考えていく。
第2回は、今年3月にイギリスで開催された欧州最大の国際開発会議から、欧州における市民社会スペースの動向を紹介する。


欧州の国際協力における市民の意識の変化

ここ数年、英国イギリスのEU離脱を始めとし、欧州諸国でも開発途上国に対する援助・協力や人道支援、難民危機に対する国民意識に影響を与えるような、政治的な出来事やトレンドが見られるようになった。日本でも同じことがいえるが、所得格差の広がり、生活水準の停滞や難民・移民への緊張の高まりによって、“国際的な結束”や“世界の貧困削減”よりも自国第一主義の考え方が高まってきており、国際協力を牽引してきた欧州の状況が非常に厳しい状況にある。

そのような状況下において、多くのドナーとなる政府機関がGNI(国民総取得)0.7%のODA拠出を達成することは難しくなってきており、援助がより直接的に国益確保に貢献できるものや、増加していく移民難民にかかる膨大に膨れ上がっていく費用に充てるしかなくなっているのである。

欧州各国でもODA予算は削減されており、それに伴うNGOを含む市民社会組織(CSO)への活動への影響は計り知れない。また、これは資金の面だけの話ではない。市民社会の活動する環境(スペース)自体が脅かされ始めていることも事実なのである。警察がNGOの事務所に強制捜査に乗り込んだり、政府機関へのNGO登録が必須となるなど、見る見るうちに市民社会組織が自由に活動を行える領域は狭窄化の一途を辿っている。

 欧州における市民社会スペースの状況

2017年3月20-21日にイギリスのロンドンで行われた、英国最大のネットワークNGOであるBondが主催する国際会議「Bond Annual Conference & Exhibition 2017」では、分科会の一つとして「Advocating for civil society space」というセッションを設けており、世界中で市民社会スペースについてアドボカシーを行うBondのメンバーが、NGOの徐々に変化してきている役割や市民社会スペースを守る新しい方法について模索をしていた。

1,000名を超えるNGO・政府機関・民間企業・財団・宗教団体関係者が参加する「Bond Annual Conference & Exhibition」。会議を主催するBondは、NGO450団体以上の会員を持つイギリス最大の中間支援組織・ネットワークNGO。

2日間の会議では、DFID(英国国際開発庁)長官がスピーチをしたセッションを含む全体セッションと、implement(実施)、inspire(ひらめき)、invest(投資)、innovate(革新)、influence(影響)、impact(インパクト)の6つのカテゴリーに分けられた27の分科会が実施された。

例えば、一つの事例として、スペインで新たに発効された、デモを行う権利を規制する内容を含んだ公安法“GAG LAW”が取り上げられた。

この新たな法律の下では、スペインの国会議事堂など主要機関の内外での抗議運動に対し、最大60万ユーロの罰金が科される可能性がある。政府に対する批判を押さえ込むための法案であり、表現の自由と結社の自由を制限することによって、スペインの民主的プロセスが一層後退している深刻な状況だと国民からは反対の声が挙がったそうだ。

この反対の声を表す行動として、スペインの活動家たちは世界で初めての手法を使った政治的デモを行った。
「Holograms for Freedom」という団体が、公式サイトを通じて集めた、新法の施行に反対する世界中のユーザーの顔や全身が写った画像データを使ってデモ行進の映像を作成したのだ。映像には2,000人以上のユーザーの画像が使用され、長さも1時間と実際のデモ行進に匹敵するものになっている。この何千ものホログラムがマドリッドにある国会議事堂の前で行進したのである。幽霊のようなホログラムの人びとが持つプラカードには、「ホログラフィックの人びとが現実の人間よりも大きな自由を得られる」となんとも皮肉な主張が書かれていた。

持続可能な開発目標(SDGs)の持つ可能性

では、この市民社会スペースの狭窄化に対し、どのような対策を講じていけばよいのか? この答えを見つけていくためには2015年9月に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)が鍵となるように感じた。

「Bond Annual Conference & Exhibition 2017」の議論の中では、SDGsというキーワードを、市民社会という枠を超えたつながりでスペースをより広げていくためのツールとして捉えるような発言があちらこちらから聞こえてきた。

「SDGsは異なる問題・テーマに取り組むグループを統合する機会を与えてくれる」
「NGOというセクターのみでの活動では、市民社会スペースを確保していくことに限界があるため、SDGsというツールを共通言語として活用し、CSOの政策環境の重要性の理解を高め、政府機関の政策へのアドボカシーにおいても、他のアクターの協力を得ながら実施していくことが必要」

「Bond Annual Conference & Exhibition 2017」では、展示会も開催され、NGOを対象にしたビジネス、教育機関、政府機関などが出展。ネットワーク作りの場も、全体セッションや分科会の合間の他、ランチタイムやレセプションなどを通して提供される。

再びスペインの事例となってしまうが、同国においては貧困や平等といった共通の課題に取り組む9つのセクターが集まって、セクター間での信頼関係の構築や強化をSDGsの達成という共通目標への取り組みとして広がりを見せているそうだ。

日本の市民社会のこれから

日本においても、“テロ対策”や“治安対策”等の名目の下、市民活動に対する制限や監視の目が強化されつつあるといわれているが、市民社会はSDGsを軸にNGOの政策環境を維持・改善していくことが必要とされる。

この市民社会スペースの問題は、一国だけで解決できるものではなく、また、各国のCSOの共通課題であることから、アドボカシー活動は日本の中だけで行うべきではなく、国際的なSDGs議論とCSOの取り組みと連携することが求められる。政策環境のアドボカシーを国際的な視点から日本での活動に落とし込み、NGOと政府機関の政策対話の枠組みで実施したり、日本における多様なセクターとの連携に活かしていくのである。

他方、共通言語としてのSDGsを見た場合、日本においては理解度や温度差は地域間・セクター間でまだまだ大きく、平準化のための普及啓発を行っていくこともNGOが進めていくべき今後の課題といえるだろう。

連載 市民社会スペース
Vol1 なぜNGOにとって市民社会スペースが重要なのか

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