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[市民社会スペース vol.1]なぜNGOにとって市民社会スペースが重要なのか

連載2017.10.06

Photo by 2014 Getty Images

今、社会課題の解決に取り組むNGO・NPOや活動家の活動を制限する“市民社会スペースの狭まり”が、世界的に発生している。誹謗中傷や脅迫、逮捕、銀行口座の凍結、ウェブサイト・事務所の閉鎖、活動許可の取り消しなど、弾圧の傾向は強まるばかりだ。なぜなのか。市民社会スペースが担う役割やこの問題にNGOがどう立ち向かうべきかを、国内外の動きを見ながら考えていく。


市民社会スペースとは何か

我々が“開発”を通じて目指す社会は、SDGs(持続可能な開発目標)のスローガンにあるように、誰一人取り残されることなく、人間の尊厳や人権が守られ、人びとが人間らしく自由に、豊かな暮らしができることである。それは、自由で平等な個人が、自立して対等な関係で構成されている社会を前提としており、その空間が「市民社会スペース(Civil Society Space, またはCivic Space)」と呼べよう。

市民社会スペースは、国際法や国際基準によって保護されており、これまでも国連の決議、声明等によって、繰り返しその重要性が確認されてきている。しかし一方でその裏返しの証左でもあるが、国連に加盟している政府自らが、これらの権利を侵害し、人びとの自由を奪っているのが実情なのだ。

Photo by Amnesty International

今世界では、表現の自由を行使したことによる拘禁、貧困や腐敗、経済的不平等、武力紛争、難民の人道的危機、あらゆる形の差別、企業による人権侵害、人身売買、ヘイトスピーチ、市民社会組織規制等、さまざまな人権問題が起きている。
これらの問題の解決のために国連の人権システムがあるのだが、そのシステムの効果的な運用を図るには、市民社会による情報収集等の関与が不可欠であり、同時に市民自らが声を上げ、行動することが肝要である。もし市民社会スペースが奪われれば、自由権をはじめとする基本的権利を享受できず、仮に権利を奪われても、奪い返す手段にアクセスできないことになる。

SDGsと市民社会スペースとの関係

SDGsは、17の目標から成り立ち、1~15は持続可能な開発のための経済、社会、環境に関わる諸課題を包含している。その中で16は、主にこれらの目標を達成するための横断的なインフラ(制度やルール)であり、平和、公正、人権、法の支配に基づく効果的なガバナンスの実現がSDGs全体にとって非常に重要な目標であると位置付けている。つまり言い換えれば、16が目指す目標は、“健全な市民社会スペースの確保”そのものともいえ、それが他の持続可能な開発目標の達成につながるのである。

例えば目標1の貧困の撲滅を達成するには、目標16が並行して達成されなければならない。もし政府が国際法等を無視し、透明性が低く、汚職だらけで説明責任を果たさなければ、その実現を求める市民の活動スペースを圧迫し、目標を達成できない可能性は高くなるであろう。また仮に一定程度の目標を達成しても、説明責任を果たせない政府では、その達成状況を維持することすらできなくなるであろう。

世界で何が起きているのか

今、世界的にも、この市民社会スペースの狭まりが問題になっているが、決して新しい現象ではない。
世界最大の人権NGO アムネスティ・インターナショナルは、今から半世紀以上前にロンドンで生まれた。ポルトガルの軍事政権下のカフェで、学生2人が「自由のために!」と乾杯しただけで逮捕され、7年の刑を受けた記事を読んで憤りを感じた弁護士が大衆運動を開始したことに始まる。その後も、市民社会スペースに関わる事例は、枚挙にいとまがなく、今日も世界中で日常的に政府が市民活動を規制し、弾圧することが起きているのが実態である。

Photo by 2014 Getty Images

ではなぜ、最近になって、この問題がクローズアップされているのであろうか。
私の仮説では、世界各地でのイスラム国をはじめとするテロ活動の激化もあるが、インターネットやSNS等の普及によって誰もが国内外に向けて情報を拡散できるようになったことと無縁ではないと思っている。これまではあまり問題にならなかったことでも、瞬時にして”現場”の状況が映像と共に広まり、動かぬ証拠となる。政府は情報伝播の影響力の大きさにも敏感に反応し、市民への弾圧やNGO活動の規制を強めているのではなかろうか。

例えば2010年12月にチュニジアで始まった、民主化を求める反政府行動(ジャスミン革命)も、SNS等による情報発信によって政府に不満を持つ若者に火が付き、大衆行動につながったといわれている。さらにはその運動が国境を越え、エジプトやリビアにも飛び火した。

中国では、ネットへのアクセスに規制がかけられ、「人権」「天安門」等のキーワードが検索できないようになっているといわれている。また北朝鮮では、市民のインターネットや国際電話の使用に規制がかけられており、海外に住む家族等と連絡を取るために国境付近の中国の電波で携帯電話を使うことが発覚すると、重い罰則がかけられ、強制収容所に送られているとの人権NGOによる報告もある。

2014年9月に香港で発生した、民主化を求める「雨傘運動」。写真中央の明かりがあるテントでは、学生が
勉強をしていた。学生が中心となった反政府運動だが、本業も忘れない姿勢が印象的だった。(筆者撮影)


今年8月には、日本人NGO職員がモザンビーク共和国の首都で開催される「アフリカ開発会議(TICAD VI)」のフォローアップ閣僚級会合に参加するためにビザ申請をしていたところ、正当な理由なく同国政府よりビザ発給を拒否された。本人は、日本政府による大規模農業開発事業「プロサバンナ」に反対する市民運動を支援しており、もしこれが原因でビザが発給されなかったとすれば、市民社会スペースが狭められている、由々しき問題だといえよう。TICADは日本政府が主導するアフリカ開発のための開かれた多国間会議だが、これまでに会議に参加するNGOの代表が入国を拒否されるということはなかった。

日本でも無縁ではない市民社会スペース問題

市民社会スペースの問題は、日本も無縁ではなく、懸念材料が増えている。
2013年、NGOは、日本の安全保障に支障をきたす恐れのある情報を秘匿できる「特定秘密保護法」の問題に対応するため、秘密保護法NGOアクションネットワーク(NANSL)を立ち上げた。その頃を境に、政治家のマスコミ圧力発言、市民活動家の恣意的な長期拘禁等が相次いで発生。そして7月に成立した「共謀罪」は、国連特別報告者から「プライバシーや表現の自由を制約する恐れがある」と懸念が示され、国際人権基準と照らし合わせて問題の多いことが指摘されたにも関わらず、施行されたのである。

Photo by アムネスティ・インターナショナル日本、グリーンピース・ジャパンと共に集会に参加。


2017年の「報道の自由度ランキング」(国際NGO 国境なき記者団/本部・パリ)で、日本は72位まで順位を下げており、ここ数年の日本の傾向を表している。SDGs目標16との関係では、国連から人権や刑事司法制度等に関わるさまざまな改善勧告を受けており、その中には16の指標の一つである、“パリ原則に準拠した、独立した国立人権機関の設置”も含まれている。

世界中のNPO・NGOが加盟するネットワークであるCIVICUSによれば、今年7月にニューヨークの国連本部で開催された、SDGsの進捗を各国が報告する会議「ハイレベル政治フォーラム(HLPF)」において、当初国別レビューを行う予定だった44カ国(実際の実施は33カ国)の「市民社会スペース度」を評価したところ、日本は他の11カ国と共に「狭まっている(narrowed)」 に位置づけられている。もしこのままの傾向が続けば、市民社会の活動そのものを委縮させることにつながりかねない。
出典:Workshop at HLPF 2017/ACTION FOR SUSTAINABLE DEVELOPMENT

我々は何ができるのか

2014年、CIVICUS事務局長は「国際人権基準は、市民組織が国際的合意に基づく規範を守るように求める運動ができる、グローバルな枠組みを提供している」と述べた。市民社会は、政府に対して直接改善を求めたり、国連の人権システムのさまざまなルートを通じてアピールし国連と一緒に活動することができる。しかし、そのためには市民社会が政府などの言動をしっかり記録し、時に自ら声をあげ、行動することが重用であり、何もアクションを起こさなければ、市民社会スペースはますます狭まるばかりである。

まずは市民一人ひとりがこの問題に関心を持つことがスタートであり、何もせず手をこまねいていれば、深刻な状態になって気が付いた時は、すでに手遅れになりかねず、それは過去の歴史が繰り返し証明しているところである。

連載 市民社会スペース
Vol2 欧州の動向から考える-SDGsは市民社会スペース問題解決の鍵となるか?

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