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【プレスリリース】南スーダン等支援現場への渡航制限による人道支援の空洞化とその改善への要望を提出

国際協力NGOセンター(JANIC)は、4月26日、日本の国際協力NGO19団体と共同で南スーダン等支援現場への渡航制限による人道支援の空洞化とその改善への要望書を、各政党に提出いたしました。 これは、深刻化する世界の人道危機に日本政府、日本の市民社会が連携して、より効果的な人道・開発支援を実施できるよう、主に以下の2点を要望するものです。

1. 人道支援に従事するNGO職員の渡航に際して、一般渡航者向けの安全基準を一律に適用する方針が見直されること。
2. 政府が資金拠出を行うNGOの活動であっても、個別の団体、事業毎にNGO側との協議の上で渡航の是非が判断され、十分な安全管理がなされている場合は、団体の自己責任による駐在や渡航が認められること。

要望書全文(PDF:169)

南スーダン等支援現場への渡航制限による人道支援の空洞化とその改善への要望
2017年4月26日

自由民主党政務調査会 御中
公明党中央幹事会政務調査会 御中
民進党政務調査会 御中
日本共産党中央委員会政策委員会 御中
日本維新の会政務調査会 御中
自由党政策審議会 御中
社会民主党全国連合政策審議会 御中
会派 無所属クラブ 御中
会派 沖縄の風 御中
cc: 外務省、国連世界食糧計画(WFP)、国連人道問題調整事務所(UN OCHA)、国連児童 基金(UNICEF)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、米国国際開発庁(USAID)

平素より日本のNGOによる人道、開発支援事業への理解と支援を頂き御礼申し上げます。

深刻化する世界の人道危機に日本政府、日本の市民社会が連携して、より効果的な人道・開 発支援を実施できるよう、本要望書に記名の団体は以下を要望致します。

1. 人道支援に従事するNGO職員の渡航に際して、一般渡航者向けの安全基準を一律に適 用する方針が見直されること。
2. 政府が資金拠出を行うNGOの活動であっても、個別の団体、事業毎にNGO側との協 議の上で渡航の是非が判断され、十分な安全管理がなされている場合は、団体の自己責 任による駐在や渡航が認められること。


増大する人道支援ニーズと主要な人道支援アクターとしての日本のNGOの成長
世界の人道危機は、昨年 5 月の世界人道サミットで確認された通り各地で大規模化、長期化、複雑化し、難民・国内避難民の数は過去最大の6,500万人に達し、そのために必要とされる資金も2000年と比較して15 倍にもなっています。この状況下で日本政府も 2015 年 に策定の開発協力大綱にて、「紛争予防や紛争下の緊急人道支援,紛争終結促進,紛争後の 緊急人道支援から復旧復興・開発支援までの切れ目のない平和構築支援を行う」方針を打ち 出しております。
日本のNGOは1990年代以降、自己資金で、あるいは政府資金も活用しながら、バルカン 諸国やパキスタン、アフガニスタン等での人道危機に応じて邦人駐在員を派遣し、現地のコミュニティや行政機関、国際機関と密接な関係を構築しながら、NGOならではの迅速かつ 現場のニーズに即した支援を届けています。結果、こうした現場での経験を積むことで、プ ロフェッショナルな組織として、人道支援の実施能力を高めてきました。
(特活)ジャパン・プラットフォーム(JPF)を通じた活動を例に取ると、2017年3月現在で JPFに加盟しているNGOは46団体。これら加盟団体が、JPFの助成により実施した人道 支援の総額は400億円、実施地域は47ヶ国に上り、日本の人道支援の重要な一翼を担うま でに成長してきたといっても過言ではありません。これに外務省日本 NGO 連携無償資金 協力を通じた人道支援関連の事業費を加えると、その規模はさらに大きくなります。

日本のNGOに課せられている渡航制限とそれに伴う実施能力低下、支援の減少への懸念 現在深刻な人道危機が進行中の国の一例として、政府も平和構築を支援して来た南スーダ ンがあります。同国では 2011 年の独立以前から、少なからぬ数の日本の NGO が、日本 NGO連携無償やJPFの助成、さらにはUNHCR、UNICEF、WFP等国連機関の資金提供 を受けて、駐在員を派遣して活動を実施し、独立に至るまでの間、そして独立後も、現地コ ミュニティの生活基盤を整え、国づくりを支援してきました。しかし近年の政治対立と武力 衝突により、同国では再度大規模な人道支援が必要な状況となっております。ところが、政 府資金の助成事業の場合、NGO職員の渡航は、一般の旅行者と同じ基準が適用されており、 レベル4の退避勧告の場合は、原則渡航が認められず、レベル3の渡航中止勧告の場合も、 一定の渡航制限がかけられる等しております。そのため、南スーダンにおいても、邦人職員 は、駐在はもとより出張も認められない状況となっています。

一方、国連機関や欧米のNGOは、現在の治安状況下でも、必要な安全管理を行いながら南 スーダン国内に約4,000人の文民の国際職員(当該国以外の、欧米や日本も含む他国出身の 職員)を駐在させ、事業を実施しております。これらの団体は必要な安全管理計画と体制を 備え、仮に2016年7月のような緊急事態があれば即刻国外退避する準備を整えながら、滞 在可能と判断される間は現地に留まって事業管理を行うことで、現場の情報に基づいた人 道支援を継続しております。 こうした状況の中、日本のNGOだけが、現地での基盤と実績を持ちながらも、日本政府の 方針により南スーダンに渡航することができず、本来実施できるはずの効果的な支援を行 うことが困難な現状にあります。また渡航制限により、従来獲得できていた国連機関からの 資金調達も困難になっています。そのため、事業を中断ないし断念し、撤退を余儀なくされ たNGOもあるのが現状です。

同様の状況は、2007年以降アフガニスタンでも続いています。同国では現在も約750人の NGOの国際職員が駐在して支援活動を行っていますが、邦人NGO職員駐在はおらず、政 府資金を利用しない渡航ですら、査証発行の条件として、駐日アフガニスタン大使館より日本政府からの渡航許可証の提出が条件として求められた事例が複数あります。このような 渡航制限により、日本の NGO が長年かけて築き上げてきた現地での事業実施基盤が失わ れつつあります。その他、人道危機が深刻化しているイエメンにおいても渡航が制限されて います。

危険度の高い地域での活動に際しては、団体としての安全管理・危機管理能力と計画、資金、 経験、人材、訓練等が必要とされますが、日本にもそのような能力を有するNGOは一定数 存在しています。しかし現在の政府の方針は、これらの団体が実際にそのような管理能力を 有するか否か、あるいは個別の出張や駐在の可否を判断することなく、人道支援の実施を目 的とするプロフェッショナルな NGO 職員の渡航を一律に一般旅行者と同様の基準で認め ないものとなっております。そして事業は全て遠隔管理で実施するよう求められています が、現場で十分なニーズと危険情報を把握する必要性、さらに政府資金の適切な管理と説明 責任の観点からも、NGOとしては受け入れられるものではありません。 NGOは人道支援原則に基づいて、政府からも独立した立場から、現地の人びとと関係を構 築し直接支援を届けています。NGOへの活動や渡航の制限の結果、日本の市民社会からの こうした支援が減少し、届かなくなることを強く恐れます。

世界的な潮流とそれを踏まえたNGOからの要望
国連や国際NGOは、2000年代以降悪化する世界の治安状況の中でも「留まって支援を届 ける(To stay and deliver)」という方針を打ち出し、増大する人道危機に対応しリスクを可 能な限り管理し、特にNGOの場合は「目立たないようにすること」を活動原則とすること で支援を届けています。そのような中、主要国で日本のみが、相手国政府や国連に資金を出 すのみ、あるいはNGOを通じた場合も現地提携団体等を通じた支援に留まり、他国や現地 の人に危険を押し付けて自らは汗をかこうとしない、いわゆる「小切手外交」に陥ることを 危惧しています。そして、日本の市民社会が築き上げた紛争国での活動の経験の蓄積が、 年々厳しくなる政府の渡航制限によって徐々に失われ、現地情勢やニーズに関する一次情 報が得られなくなり、人道支援の現場で日本は不在となること、そして有為の若い人材は国 連や欧米の NGO でのみ人道支援に従事するような、支援と人材の空洞化が進むことを懸 念します。

以上により、本要望に記名する団体は、人道支援に従事するNGO職員の渡航に際して、一 般渡航者向けの安全基準を一律に適用する方針が見直され、政府が資金拠出をおこなう NGOの活動であっても、個別の団体、事業毎にNGO側との協議の上で駐在や渡航の是非 が判断され、十分な安全管理がなされている場合には、団体自己責任による駐在や渡航が認 められるよう、制度と運用の改善を要望します。

以上

要望団体
NGO安全管理イニシアティブ(JaNISS)
特定非営利活動法人 関西NGO協議会
特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC)
特定非営利活動法人 名古屋NGOセンター
特定非営利活動法人 にいがたNGOネットワーク
特定非営利活動法人 ADRA Japan(ADRA)
特定非営利活動法人 カレーズの会
特定非営利活動法人 CWS Japan(CWS)
特定非営利活動法人 シャプラニール=市民による海外協力の会(SN)
特定非営利活動法人 ジェン(JEN)
特定非営利活動法人 世界の医療団(MDM)
特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR)
特定非営利活動法人 日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)
特定非営利活動法人 日本紛争予防センター(JCCP)
公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会(SVA)
公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)
特定非営利活動法人 BHNテレコム支援協議会(BHN)
特定非営利活動法人 ミレニアム・プロミス・ジャパン(MPJ)
特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)