【内容】
開発途上国での特に大型開発プロジェクトが環境破壊や先住民の権利の蹂躙につながっているとの批判は昔からあり、先進国側もプロジェクト実施にあたり、一応は環境への影響調査やモニタリングを行うようになってきている。
だがこのような開発と現地への悪影響という構図は、グリーンなODAが実施されていると思われている先進国の中でもいまだに見られるものだ。
膨大なオイルサンドのおかげで石油大国となったカナダでは、オイルサンド採掘による環境破壊、現地の人々の健康と暮らしへの悪影響、先住民族の権利侵害が問題となっている。
このオイルサンドとは、油分が含まれた土壌のことで、掘り出して熱湯をかけて油分を分離するか、何カ月も地中に水蒸気を送り込み、油分の粘性を下げてからパイプでくみ上げる。こうしてとれた油分(ビチューメン)は、さらに熱・圧力・化学物質を加えて改質してようやく通常の原油と同じように利用できる合成原油となる。
かなりエネルギーが必要で(炭素排出量も多く)コストがかかる資源だが、原油価格の高騰により、オイルサンドでも十分利益が見込めるようになった。そして2003年から、オイルサンドの埋蔵量が世界の原油埋蔵量に含まれるようになり、今やカナダはサウジアラビアに次ぐ世界第2位の石油大国である。
しかしこのオイルの富により、民主的で環境に配慮する自然豊かなイメージで語られるカナダという国がおかしくなっている。
今月は、その現場であるアルバータ州の現実を伝えると共に、オイルサンド開発中止を求めて立ち上がった市民活動の最前線を報告する。
【目次】
1 この非在来型原油を受け入れられない理由 (NI p4-7の翻訳)
二酸化炭素の排出、環境破壊、地域に住む先住民の暮らしと健康への悪影響など、世界で最も有害な産業プロジェクトと言われるオイルサンド開発。それはいったいどのようなもので、環境と人間にどのような影響を及ぼし、その中止を求める人々はどんな方法で政府や企業と渡り合っているのだろうか。
7 死ぬまで闘い続ける決意(NI p12-15からの要約)
オイルサンド採掘による最大の被害者は自然環境であるが、その自然に依存して生きてきた地元の先住民族も生活と健康に大打撃を受けている。小さなコミュニティーのまれながんの患者、川魚の奇形、味が変わってしまったカモの肉、自然の恵みに頼った生活が崩れ採掘企業が与える仕事に頼らざるを得ないという経済状況の変化……。企業や政府のやり口から、健康被害と問題に立ち向かう人々の動きと決意まで、先住民の視点から現状を報告する。
10 カナダが抱える不幸の源(NI p9からの要約)
かつて、いや、今も多くの人々が、カナダと聞けば雄大な自然、リベラルな政治、人種的に寛容な社会、環境重視などのイメージを思い浮かべるだろう。しかし、オイルサンドの生産が本格化してから、この国も石油の呪いにとらわれ、現実はそんなイメージから遠ざかりつつある。はたしてカナダは、堕落した石油国家に成り下がってしまったのだろうか。
11 オイルサンドの惑星(NI p17からの翻訳)/土から原油へ?オイルサンド採掘2つの方法(NI p10からの翻訳)/油層内回収法の仕組みと問題
12 アクション! ─ 何かする・もっと知る/日本での動き
・日本の団体と参考ウェブサイト、本、資料などの情報。
・日本とオイルサンドのかかわり、どこから来て、どこへ行くのか。
14 今月のフォーカス(NI p24-27の要約)
●マグロは氷山の一角:深刻な海の問題
マスメディアは、マグロやクジラをめぐる国際政治劇場で起こるドタバタ劇ばかりを報道する。そして私たちは、なじみの深い魚の話に目を奪われがちである。だが、マグロやクジラのことは海の問題の一部にすぎず、状況はずっと深刻だ。あらゆる魚種の資源量減少、海洋汚染、無法な振る舞いの海賊漁船の存在など、海の問題はもっと大きな視野でとらえなければならないものなのだ。海が抱える問題と、その解決策について探る。
15 世界のニュース(NI p30、32からの要約)
・クーデターへの抵抗運動(ホンジュラス)
・生臭いビジネスの犠牲(西サハラ)
・SPEECHMARKS(ブルース・スプリングスティーン)
16 編集後記、次号のお知らせ、ほか
*英語版の内容、日本版の一部立ち読みは次のページからどうぞ。
http://www.ni-japan.com/webold/jbody431.htm
※今月のオンラインリポート「やるべき仕事をやっただけです」
http://www.ni-japan.com/report/onlineRep/topic431.htm
先住民の健康被害を公にした結果告発されてしまった医師へのインタビュー
■New Internationalist(NI) & ニュー・インターナショナリスト日本版とは
1973年に英国の非営利団体(Oxfam、Christian Aid、Cadbury and Rowntree Trusts)の支援によって創刊した「NI(エヌ・アイ)」は、南の開発途上国と北の先進国の間に横たわる環境、貧困、紛争、人権、企業などにまつわる問題を広く世界に問いかけ、欧米主要メディアとは一線を画した本質を追求する月刊誌です。社会的弱者・草の根の視点から世界情勢を報道・分析しています。また、単に問題を伝えるだけでなく、未来を見据えて問題解決に取り組んでいる人々の動きやアイデアも紹介しています。「NI日本版」は、NIの記事の翻訳・要約を中心に構成し、日本の情報も加えて発行しています。
| 発行日 | 2010年4月30日 |
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