【内容】
現在世界には68億人以上の人々が住んでいる。国連の予測によれば、世界人口は2050年には90億人(中位推計値)に達する見通しで、現在の1.32倍あまりになるということだ。
そこで誰もが心配になるのは、今でも世界各地で叫ばれている食料不足、水不足、環境破壊などが悪化していくのではないか、そしてそれにともなって国、地域、世界レベルで情勢がさらに不安定化し、緊張が高まっていくのではないか、ということだろう。また特に昨年12月に行われたコペンハーゲンの気候変動会議に向けた動きとして、人口増加が地球温暖化の一因であり、温暖化対策として開発途上国の人口抑制をすべきだ、という主張も聞かれた。
これらの深刻な問題が起こるのは、この小さな地球にあまりにも多くの人間が住んでいるからなのだろうか? 特に、人口増加が著しい開発途上国が大きな原因となっているのだろうか?
中国やインドなど人口が増え続ける開発途上国。その一方で日本やイタリアなど人口が減少または増加がほとんど横ばいの先進国。このような構図を描き問題を感情的に書き立てる先進国のマスコミは、その責任の所在を人口や出生率から「多すぎる彼ら」に押しつける傾向が見られる。しかし事実はそう単純なものではない。
社会の多様な部分に影響を及ぼし、その一方で社会のさまざまな要素から影響を受ける人口。それは、歴史から経済発展、保健医療から人権に至るまで、幅広い視野からの客観的な分析に基づいた冷静な議論と、将来を見据えた長期的な視野に立って考えていくことが必要なテーマである。
今月のNIは、幅広い地域と分野からの視点で、「人口問題」と言われるものについて探っていく。
【目次】
1 人間は多すぎるのか (NI p4-5の翻訳)
温暖化対策としての途上国人口抑制策、子どもの虐待を減らすための最貧困層への避妊奨励金……。感情を刺激する人ロという問題へのイントロダクション。
3 人口パニックの視点 ― 2,000人の人口学者の否定 (NI p5-8の翻訳)
現在約68億人の世界の人口は、2050年には90億人に達すると推測されているが、その後は横ばいとなって減少に転じると考えられている。このような状況の中、途上国での著しい人口増加に注目が集まっており、温暖化と資源欠乏に関する感情的な議論が飛び交っている。一方先進国では、少子高齢化も感情を刺激するテーマである。感情を抑えた長期的視野に立つ冷静な状況分析をすると、実際は何が見えてくるのだろうか。
6 高齢化 ─ 7つの誤解(NI p9からの翻訳)
今後は世界的に少子高齢化が進んでいく。しかしそれは、多くの人々が危惧しているほどの危機的な状況というわけではない。主な7つの懸念について詳しく見てみよう。
7 トレンド ─ 中絶と移民(NI p13、p16からの翻訳)
中絶の動向と移民の現状について。
8 人口と気候変動 ─ 2つの視点(NI p17-18の要約)
人口の増加は、地球温暖化に悪影響を及ぼしているのか? 温暖化対策を困難なものにしているのか? 地球温暖化対策の一環として、途上国の人口増加を抑制する必要はあるのだろうか? 異なる主張を展開する環境評論家のジョナサン・ポリットと政策提言NGOのザ・コーナー・ハウス。2つのぶつかり合う意見を聞いてみよう。
10 人口の課題に臨む姿勢とは(NI p19-20の要約)
環境破壊や気候変動、食料や水の不足。結局これらは、途上国の人口増加そのものよりも、物の分配や社会・経済の仕組み、先進国のラィフスタイルによるところの方が大きいと言っていいだろう。その現状についてバネッサ・ベアードが分析する。
12 日本での動き
今回は、人口の課題に対して取り組む4人の方々から、それぞれの取り組みの中で考えること、不安、エピソードなどについて話を聞いた。
人口は人の数を表す数字であるが、一口に人口と言ってもさまざまな側面がある。不安定な人間と人間社会の産物である人口は、時がたてば変化し、地域、文化、宗教、人口構造(年齢)など、まとめ方によって異なる顔を見せる。
もちろん人口というテーマは、単に人間の数が増えた減ったというだけでなく、その原因と結果にまつわるさまざまな要素が含まれ、「人口を見る視点」は多様である。今回の4つの視点は、マスメディアの報道にありがちなセンセーショナルな数字の増減とは異なる、幅広い見方を与えてくれるだろう。
●人口変化がもたらす影響 <日本大学人口研究所 副所長 安藤博文>
●途上国の現実と家族計画
<財団法人ジョイセフ(家族計画国際協力財団) 常任理事・事務局長 石井澄江>
●途上国の発展と人口ボーナス <国連人口基金東京事務所長 池上清子>
●社会の変化とエンブリオロジストの役割
<一般社団法人日本臨床エンブリオロジスト学会員 佐藤和文>
13 アクション! ─ 何かする・もっと知る
日本の団体と参考ウェブサイト、本、資料などの情報。
14 今月のフォーカス(NI p22-23の要約)
・修羅場と化した気候変動会議
ジェス・ワースが内側から見た、コペンハーゲン国連気候変動第15回締約国会議(COP15)の崩壊現場報告。
15 世界のニュース(NI p27、p28からの要約)
・学生たちの圧勝(労働者の権利)
・地雷除去のヒーロー(カンボジア)
・買うべきか買わざるべきか(フェアトレード)
16 編集後記、次号のお知らせ、ほか
*英語版の内容、日本版の一部立ち読みは次のページからどうぞ。
http://www.ni-japan.com/webold/jbody429.htm
■New Internationalist(NI) & ニュー・インターナショナリスト日本版とは
1973年に英国の非営利団体(Oxfam、Christian Aid、Cadbury and Rowntree Trusts)の支援によって創刊した「NI(エヌ・アイ)」は、南の開発途上国と北の先進国の間に横たわる環境、貧困、紛争、人権、企業などにまつわる問題を広く世界に問いかけ、欧米主要メディアとは一線を画した本質を追求する月刊誌です。社会的弱者・草の根の視点から世界情勢を報道・分析しています。また、単に問題を伝えるだけでなく、未来を見据えて問題解決に取り組んでいる人々の動きやアイデアも紹介しています。「NI日本版」は、NIの記事の翻訳・要約を中心に構成し、日本の情報も加えて発行しています。
| 発行日 | 2010年2月28日 |
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