『本当に必要な支援』
お話をうかがったスタッフの方

支援企画グループ 京井杏奈さん
京井さんからのメッセージ
「海外協力というのは一方的ではなくて、お互いが学びあったり、助け合ったりして成り立つものだと思うんです。シャプラニールではその気持ちを大事にしています」。
南アジアの人々が直面する課題を「遠い」ものではなく、自分たちの課題として受けとめ、同じ地球に生きる、ひとり一人の「身近」な取り組みによって世界を変えるきっかけをつくろうと活動している団体があります。今回はシャプラニール=市民による海外協力の会 (以下シャプラニール)で国内活動を担当している、京井杏奈さんにお話を伺いました。
一時的な支援への疑問
シャプラニールの立ち上げは1972年、バングラデシュがパキスタンから独立した直後のことでした。
「当時のバングラデシュは物資が不足していて混乱状態だったんです。その時に日本の青年ボランティア50数名がバングラデシュ復興農業奉仕団として派遣されました」と京井さん。そこで彼らが現場を見て感じたことは、一時的な支援への疑問だったと言います。「疑問を持ったメンバーが日本に戻り、現地に本当に必要な支援は何だろうと考え、今のシャプラニールの前身であるHBC(ヘルプ・バングラデシュ・コミティ)を作ったんです」。

耕運機の指導をする様子(復興農業奉仕団)
届けたい支援と伝えたい豊かさ
「当時は、救援物資が届くのは都市部の一部の人だけで、本当に貧しい村の人たちまでには支援が届いていないという状況でした。そんな状況を見て、本当に必要な人に支援を届けたいという思いからHBCは本格的に活動を開始したんです」と京井さん。
また、「HBCのメンバーはバングラデシュの人々の人情や美しい自然の豊かさを感じて、バングラデシュという国そのものに魅力を感じたんですね。そういう豊かさを日本に伝えていきたいというのも彼らの目的の一つでした」。

新宿の歩行者天国でバングラデシュ救援を訴える
失敗して再確認した思い
初めて支援を行ったのはバングラデシュでの農村支援でしたが、結果として失敗に終わってしまいます。
「街頭募金を集めて、そのお金でノートと鉛筆を村の子どもたちに渡しに行ったんですね。でも、次の日に市場に行ったら、渡したノートと鉛筆が売られていました。その状況を見た彼らは、一方的な支援をしてしまったことを反省したんだそうです。結局、子どもたちはノートと鉛筆より、その日を生きる食べ物を買うお金が必要だったわけです。その時から、『彼らにとって本当に必要な支援を』というのは今でも変わらない思いとしてあります」。
取り残された人々
シャプラニールでは、「取り残された人々のエンパワメント」を活動目標のひとつに掲げています。今、バングラデシュでは経済発展が進んでいますが、貧富の差が広がり、経済発展から取り残されてしまう人々がいます。たとえば立場の弱い女性や夫をなくした女性、障がいを持った人々や、働いている子どもたちです。

障がい者への差別撤廃を訴えるキャンペーンの様子
調査をしたからこその発見
中でも最近、力を入れているのが家事使用人として働く少女たちの支援だと、京井さんは教えてくれました。
「10年くらい前から都市部でのストリートチルドレンへの活動が始まったんですけど、活動が進むにつれて、施設に来る子どもたちの多くが男の子だということに気付いたんです。調査をしてみると、女の子たちは家の中に閉じこもって家事使用人として働かされているケースが多いということが分かりました。家の中で働く少女たちへは外部からの接触が難しいため、政府や他のNGOもあまり支援をしていない状況でした。取り残された人々だったのです」。

雇い主の家で拭き掃除をする少女
少女たちの自信に
シャプラニールでは2006年から家事使用人として働く少女たちへの支援を行っています。
「現地の4つの支援センターでは、文字の読み書きや計算、性教育、レクリエーションなどに加え、家事のトレーニングもしています。児童労働を促進しているのではないかと言われることもありますが、今現在家事使用人として働いている子どもに対し、すぐに仕事をやめさせるというのはとても難しいことなんです。なので、まずはその子たちが働きながらでも学ぶことができ、怪我をしないで安全に仕事をし、自分を守れるようにすることを最優先として活動を行っています。新しいことが上手にできるようになることは少女たちの自身にも繋がります」。

先生が読み聞かせ
共有する楽しい時間
支援センターでは少女たちに来てもらえるような楽しい工夫がしてあります。
「他人の家の中で仕事をしたり、生活をしている彼女たちは周りとの触れ合いがあまりないんですよ」と京井さん。「支援センターは同じ境遇の子どもたちと触れ合える場所なんです。子どもらしい時間が持てるよう、レクリエーションも行われていて、去年は運動会をしました。みんなで絵を描いたり、文字の読み書きを練習したりもします。最初は自分の名前から、そして住所。1つ1つベンガル語の文字から始めます」。

ミシン研修の様子
本来は家庭で教えられること
支援センターが担うもう一つの役目は教育。性教育から保健衛生までその範囲は多岐にわたります。
「親元を離れて一人で住み込みで働いている少女も多いので、何がよくて何がだめなのか分からない状況の少女たちもいるんです。ごはんを食べる前には手を洗うこと、体を清潔にすることなど、私たちが親や学校で教えてもらったことを知らない少女たちもいるのでそういった保健衛生も教えています」。彼女たちが村に帰ったときに友達や兄弟にここで学んだことを教えるという役割も果たしているのだそうです。

運動会で徒競走している様子
<インタビューを終えて>
本当に必要な支援に対するまっすぐな気持ちと、それを反映する調査力。家事使用人の少女たちの1番必要なものを考えることができるシャプラニールならではの支援に大きな優しさと強さを感じました。
(JANICユース 小松崎 瞳)
JANICユース http://www.janic-youth.org/(新しいウィンドウが開きます。)
国際協力NGOセンター有志グループ(JANICユース)
広報チーム 権 智娜
マネジメントチーム 小松崎 瞳 (編集)

