JANIC Books
NGOの情報誌
シナジー

2016年4月25日発行

NGOの働き方改革

NGOの情報誌
シナジー

2015年12月25日発行

私たちのSDGs-本当に達成するために-

人道支援の品質管理と説明責任(Quality & Accountability)に関する国際基準とは

2011年3月に発生した東日本大震災を受け、緊急救援やその後の復興支援に多数の日本の国際協力NGOが関わりました。

海外での災害発生時には、その災害規模が各国政府や地域社会の持つ対応能力を超えた場合に、国際協力NGOが救援活動を行います。現場に出向いたNGOスタッフ達は、各種の「国際基準」を基に、人間としての最低限の尊厳を保つ救援事業を実施しています。例えば、国際基準の一つである「スフィア」では、現場で参照できる基準として、「避難所の給水:1人あたり1日15リットル、トイレの設置:50人あたり1ヶ所、男性用1に対し女性用3の割合」等を提示しています。また、「HAP基準」では、事業の実施にあたるNGO職員が心得るべき行動規範や、情報共有の仕方についても定めています。

そのように、途上国などの災害現場で役立つノウハウや経験を備えているNGOですが、東日本大震災への支援活動では、日本であっても国際基準に沿うには難しさがあるという現実に直面しました。例えば、食糧(炊き出し)の水準は国際基準で必要とされている量・栄養レベルに達していない避難所が多く見られました。被害の大きさや国内での支援活動は多くのNGOにとって初めての経験であり、参考にできる考え方や事例も限られていました。また、NGOが現場の行政や地域の団体と協働するなかで、これら国際基準に対する理解を共有することも簡単ではありませんでした。今までの取組みを振り返る中、被災地・被災者のニーズへの対応が十分できたとは言い難い状況だったとの認識と反省が私たちの中にあります。

今後起こりうる国内外の災害に備えるには、災害支援の実施者として「支援の質(クオリティ)」と「説明責任(アカウンタビリティ)」に関する必要性と重要性の理解を深めることが重要です。そこでJANICでは日本国内に国際基準を普及する様々な取り組みを行っています。

「支援の質と説明責任(Quality & Accountability : Q&A)」とは?

「質の高い支援」とはなんでしょうか。 それは、被災者が「尊厳ある生活」を営むための最低限のモノ・サービスが提供されること。しかも、被災者が納得・満足する支援プロセス、モノ、サービスが提供されることであると私たちは考えます。

そのためには、NGO/NPOが組織として、情報共有、調整と協働、参加、透明性、クレーム対応、スタッフの能力にかかわる仕組みや体制をつくることが大切です。 災害支援の実施者であるNGO/NPOの説明責任(アカウンタビリティ)とは、資金提供者に対するものだけではありません。むしろ、被災者等の支援を受ける側に向けて、きちんとした仕組みや体制を構築・運用しながら質の高い支援を実施することにこそ、その使命があり、責任(アカウンタビリティ)があると考えています。

「支援の質と説明責任(Q&A)」に関する国際基準

質の高い支援を確実なものとするために、NGOの世界で国際的に最も採用されているツールとして、
 ⇒ スフィア・プロジェクト(人道憲章と人道対応に関する最低基準)
 ⇒ HAP基準(人道支援の説明責任と品質管理に関する基準)
の二つがあります。

*研修にご興味のある方は、各種セミナー・ワークショップ(不定期開催)にご参加ください(今後のスケジュールは「JANICからのお知らせ」に随時掲載していきます)。